疲労回復に効く栄養成分が明らかに 補助食品も登場過剰摂取には注意

こうした動きは他の栄養素や食品にも影響を及ぼしている。カゴメは鈴鹿医療科学大学と共同で、トマトジュースの疲労軽減効果を研究中だ。

トマトは各種ビタミンやミネラル、アミノ酸、糖類など多くの栄養素を含む。抗酸化作用で注目されている成分「リコピン」が疲労予防に強く関わる可能性は低く、どの成分が有効なのかまだ詳しく解明できていない。運動前や中間に飲むと疲労軽減の効果はあるが、運動後に飲んでもあまり効果が表れないのも不思議な点だ。有効成分とその仕組みの解明を目指す。

抗疲労プロジェクトで大阪市大とカネカは共同で、酵素の働きを補う生体成分「コエンザイムQ10」の作用を調べている。最近の研究から、原因不明の疲労や倦怠(けんたい)感が長期間続く「慢性疲労症候群」のうち、鬱症状など一部の症状を改善できる可能性を明らかにした。また、大阪市大ははちみつの業界団体と共同で、ロイヤルゼリーの疲労の予防・回復効果を人で確認する研究も進める。

「成分濃縮」に注意

疲労の予防や回復に有効な成分が分かっても、それだけに依存しない利用方法が重要だと専門家は指摘する。カゴメと共同研究する佐藤英介・鈴鹿医療科学大教授は「トマトジュースを大量に飲めば下痢を起こしやすくなる」と指摘する。色々な調理法でトマトを摂取するほか、他の食材との組み合わせを勧める。

BCAAの過剰摂取は、脳内の生理活性物質「セロトニン」の濃度低下を招くとの指摘もある。これにより鬱症状や疲労を感じる状態に陥る恐れがあり、肉体的な回復をねらっても精神的には疲労が続く事態になりかねない。

大阪市大の鰐渕英機教授は「有効成分を濃縮したという宣伝文句には気をつけた方がいい」と話す。健康食品の場合、医薬品のような厳密な評価を経て商品化されていないため、効果や安全性と摂取量との関係が曖昧になりがち。利用する際には「人で検証可能な実験が行われたかどうかを、しっかりと確認して欲しい」(鰐渕教授)と強調している。

(編集委員 永田好生)

ひとくちガイド
《ホームページ》
◆疲労の予防や回復に役立つメニューづくりと普及を支援する大阪産業創造館の事業を紹介(http://www.sansokan.jp/healthcare/recipe/)
《本》
◆科学的な根拠に基づいた栄養学の重要性を説く解説書「人間栄養とレギュラトリーサイエンス」(細谷憲政著、第一出版)

[日本経済新聞朝刊2012年11月18日付]

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