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駅舎、地下鉄車両、カメラ…懐古調の商品、なぜ人気?

2012/11/13 日本経済新聞 プラスワン

「東京駅が昔の姿に戻って懐かしかった」。戦前生まれの神田のご隠居、古石鉄之介が事務所に寄った。所長が首をかしげた。「そこまで古くはないけどかつてのヒット商品も相次ぎ復活している。不思議だ」。久しぶりに自ら調査を始めた。

■「郷愁」「新鮮」 世代超え支持

復元された東京駅には大勢の見物客が訪れる

「平日でも見物人でいっぱいだ」。約100年前の創建時の姿を復元した東京駅丸の内駅舎に着いた所長は驚いた。JR東日本の貝瀬厚さん(44)が通りかかった。オープンした10月に同駅を訪れた人は前年より少なくとも3割程度増えたという。「外観は大正。でも内部と周辺は最新です」

駅舎を軸にホテル、オフィスビル、レストランなどを整備。「多くの人が集う場所に育てるつもりです」

この春には東京メトロが地下鉄銀座線の新車両として、80年以上前の開業時の車両に似せた「1000系」を導入。利用者から「いつ走っているのか」などの問い合わせが相次いだ。同社の荻野智久さん(38)が明かした。「車内の照明はすべて発光ダイオード(LED)。スムーズにカーブを曲がれる装置でレールのきしむ音を抑えています」

所長は考えた。「ともに懐古調だが中身は最新。ナゾ解きのキーワードかも」

ぴったりの商品が売れている。所長が富士フイルムを訪ねると、電子映像事業部の上野隆さん(44)が2011年3月発売のコンパクトカメラ「X100」を見せてくれた。「10年ほど前まで多く残っていたフィルム式カメラについていたファインダー(のぞき窓)がある」。興味津々の所長に上野さんが説明した。「でもこれはデジタルカメラ。手動操作に切り替えられる部分も増やし、外見は昔のカメラに近づきましたが」

想定店頭価格は約13万円と高めだが、初年度の世界出荷数は計画を2割上回る12万台に達した。日本での購入者の6割は40歳以上。一方で「“かわいい”と評し、新しさを感じる30歳前後の女性もいますよ」と上野さんは教えてくれた。

所長はつぶやいた。「懐古調の商品をみて、中高年は懐かしさ、若い世代は新鮮さを感じているのか」

「その通りです」。船井総合研究所の岩崎剛幸さん(43)が解説を始めた。「こうした手法はノスタルジックマーケティングと呼ばれるようになりました。東京駅や地下鉄車両も、その枠内での『商品』です」

懐古調は00年前後から増えたという。1970年代や80年代のヒット商品の復刻版などが多い。売り手も買い手もちょうど一世代が交代した。外見と中身がともに懐古調なのはロッテのチョコ菓子「ビックリマン伝説」シリーズ、容器の形をボトル風に戻したカルピスの乳酸菌飲料「カルピス」、消費者の要望で復活した不二家のキャンディー「ソフトエクレア」など食品に目立つ。販売は好調だ。

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