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愛媛・今治市小島 明治の要塞、瀬戸内に

建造物に見る 職人の気概

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NIKKEI STYLE

19世紀末の日露戦争開戦前夜。両国間の緊張が高まるなか、ロシア太平洋艦隊は日本の脅威だった。攻め込まれたらどう迎え撃つか。国は万一に備えて瀬戸内海の島に芸予要塞を築いた。それから100年余り、愛媛県今治市に要塞跡が今もひっそりと残っている。

◇            ◇

小島と書いて「おしま」と読む。周囲3キロほどの小さな島が目的地だ。島へは今治市の波止浜港から渡船が出ている。出航が近づくと、買い物袋を抱えたおばあさんや釣り客らが桟橋に集まってきて世間話に花を咲かせる。これから向かう先に明治の軍事遺構があるとは思えないのどかな雰囲気だ。

「島に要塞跡があると知っている今治市民も、そう多くないんですよ」。今治地方観光ボランティアガイドの会、香西巧さん(72)が船上で教えてくれた。40年以上も今治に住む香西さんが初めて現地を訪れたのも6年前、ガイドを始めてから。尾道(広島)と今治(愛媛)を結ぶ「しまなみ海道」が開通し、観光の目玉を探しているなかで「小島におもしろいものがある」と教えられたのがきっかけだ。

朽ち果てた小規模な遺構を想像するのは早計だ。砲台跡や兵舎、発電所、弾薬庫など10を超える旧要塞施設が島内に散在。大砲や発電機などは撤去されているが、石組みとレンガを多用した建造物はほぼ原形をとどめ、間近で見て触れられる。

船で揺られること約10分。上陸後、香西さんの案内で港に近い発電所跡に向かう。ここから電力を供給し、島南端に置いたサーチライトが夜間も船舶を明るく照らした。驚くべきは外観の美しさ。積まれたレンガは寸分の狂いもなく、今もきれいな幾何学模様を描いている。

要塞は1899年(明治32年)に着工し、1902年(同35年)に完成したとされる。100年以上もたつのに、想像以上に保存状態がよい。「建設に駆り出された人員の中で、最も高い給金をもらっていたのがレンガ職人。腕の立つ職人仕事だから時間経過にも堪えられたのだろう。風雲急を告げる状況でも細部にまで手を抜かない明治の気概がうかがえる」と香西さんは話す。

島には3つの砲台と火砲16門が据えられた。主力は高台にある中部砲台。石組みの堅固な砲台と砲座が山腹に残る。当時の日本で最大級の28センチ砲が6門配備された。最大射程約7キロ、砲弾1発の重さ約200キロで破壊力抜群。日本海から関門海峡を抜け、大阪を目指すロシア艦隊を迎え撃つ計画だった。

◇            ◇

瀬戸内にあまたある島々の中で、なぜ小島を選んだのか。その理由は、しまなみ海道・来島海峡大橋の上から眺めるとよく分かる。大橋は歩道が併設されているので歩いて行ける。

海面約60メートルの橋上から海域をのぞくと、来島海峡にまっすぐ進む航路を妨げるように小島は鎮座し、船舶は迂回(うかい)せざるを得ない。来島海峡は鳴門海峡、関門海峡とともに日本三大急潮とされ、海運の難所。運航に細心の注意が必要で、攻撃するのに絶好の立地だった。

要塞完成後、島には百数十人の部隊が駐留した。ただ、艦隊の侵攻も要塞の出番もなかった。中部砲台にあった28センチ砲のうち、2門が1904年(明治37年)に小島から旅順(現中国大連市)に運ばれて日露戦争の二百三高地の攻略に活躍したそうだ。

要塞は明治末期に役割を終え、大正期に地元に払い下げられた。使い道が定まらぬまま、在りし日の姿を今日にそのまま伝えることとなった。小島の人口は現在わずか23人。穏やかな集落の情景と、まがまがしい要塞跡のギャップに平和のありがたさを改めて思った。

(編集委員 石塚由紀夫)

<旅支度>島内の散策、約2時間で
 波止浜港から小島へは日に約10便。往復380円。島内は散策路が整備され、約2時間で回れる。今治地方観光ボランティアガイドの会に案内を頼むには今治地方観光協会(電話0898・22・0909)に事前予約を。無料だが、ボランティアの交通費は利用者の負担だ。
 潮の流れを間近で体験できる来島海峡急流観潮船(大人1000円)が「道の駅よしうみ いきいき館」から出ている。12~2月は5人以上の事前予約で運航。問い合わせは運航会社、しまなみ(電話0898・25・7338)へ。

[日本経済新聞夕刊2012年11月7日付]

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