一揆の原理 呉座勇一著人と人がつながる歴史 見える

2012/11/8
(洋泉社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

かつて、一揆は世なおしをもとめる運動として、とらえられた。社会革命へといたる可能性を、そこにさぐった歴史家も、大勢いる。

 しかし、そこまでの展望をもった一揆は、ほとんどない。たいていの一揆は待遇の改善をもとめる、今日の春闘めいた運動でしかなかった。一見いさましげにうつる見せかけも、当局者にたいするブラフだったとみなしうる。誰も、本気で体制を転覆させようとは思っていなかった。国会対策めいた裏取引だって、日常的におこなわれていたのである。

 一揆の面々は、しばしば神仏の前で、一味の結束をちかいあった。そこに、今はうしなわれてしまった宗教的な力を感じとる歴史家も、けっこういる。神仏を前にした平等を、熱っぽく語る者もいなくはない。

 だが、神仏を前へおしだすかまえにも、世俗的な側面はある。なによりも、それは一揆のパフォーマンスをかたちづくっていた。一種の劇場型政治がめざされてもいたのである。

 この本は、室町以後の一揆がたどった歩みを、わかりやすく説明してくれる。人と人のつながる歴史が、そこからは見えてくる。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2012年11月7日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

一揆の原理 日本中世の一揆から現代のSNSまで

著者:呉座 勇一.
出版:洋泉社
価格:1,680円(税込み)

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