スマホで水墨画やスプレー画、お絵かきアプリ楽しく
寒さがだんだん厳しくなり、室内で過ごす機会が増えてきた。そんなときに手軽に楽しめるのがスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)で絵が描けるアプリ。イラストなどにとどまらず、水墨画やスプレーで落書きなど実際にはなかなか試せないものを疑似体験できるのもスマホならではの楽しさだ。
「ここまで完成度が高いイラストができるんだと驚いた」。美術大学卒でデザイナーの経験を持つ都内在住の辻本健太さん(32)は「LayerPaint」で描いた作品の出来栄えに感心した様子だ。
ペンは鉛筆、エアブラシなど6種類から選択でき、色、太さ、透明度も全て自由に設定できる。一部分を拡大して細部まで手を加えられるうえ、絵をパーツごとに描いてから組み合わせられるレイヤー機能もある。
ツイッターに投稿も
作品はスマホ本体に保存でき、ツイッターなど外部への投稿もできる。プロのイラストレーターを目指すような人でも、外出中のちょっとした時間にイラストの練習ができそうだ。
逆に、絵なんてほとんど描いたことがないという人でも「Spray Painter」なら気軽に楽しめる。誰もが一度はやってみたいができずにいる、壁面への落書きを思う存分体感できるアプリだ。
まず落書きをする壁とスプレーの色を選択。実際にスプレー缶を使っているように動作に合わせて「カラカラ」「プシュー」という効果音が鳴る。ペンキの液だれも表現される。
親子で一緒に遊べそうなのが「Zebra Paint」。海外のアプリだが、説明なしで感覚的に使える。素材の下絵を決めた後、好みの色を選んでいき、完成させる。ワンタッチで同一枠内を塗りつぶすことができ、ポンポンと気軽に楽しめる。
塗り絵では、ついつい「そこはこっちの色がいい」と口を出してしまうのが親の常だが、スマホなら子供は失敗を恐れず自分の感覚でどんどん試せる。いろんな配色を試すなかで色彩感覚を磨く効果が見込めそうだ。
同じ絵を描くにしても、一風変わった画法を試せるアプリもある。「イラスト系アプリは海外製が主流だったので、日本らしい特色を出そうと思った」。水墨画風のイラストアプリ「Zen Brush」を開発したピー・ソフトハウス(仙台市)のプランナー兼プログラマーの工藤拓磨さん(33)は狙いをそう説明する。
墨の濃淡まで表現
筆の代わりに指で操作するが、墨独特のかすれやはらいがリアルでくせになる。黒しか色が選べない点や一度書いたら戻れない点も実際と同じ。半紙の種類や墨の濃淡などは細かに選択でき、本物らしさを追求している。作品はツイッターに投稿できるほか、作品集アプリもある。
「魚が泳いだよー!」。都内に住む加藤裕紀さん(仮名、32)が長女の麻衣さん(同、5)と楽しむのは「キッズペイント」。子供向けのお絵描きアプリだが、描いた絵の中に水を描き加えられる点が独特だ。裕紀さんは「スマホならではの機能がうまく組み合わせてある」と指摘する。
遊び方は簡単。画面上で色鉛筆を選んで金魚鉢や池に見立てた枠を描き、しずくのアイコンに触れてから枠の中を指でなでると水がどんどん流れ込む。スマホを傾ければ水もそちらに流れ、指で水面をはじけば水しぶきがはねる。魚や船などのイラストを描けば本物のように水中を動いたり、浮かんだりする。
開発したフィジオス(東京・文京)は「説明なしで直感的に楽しめ、かつ今までにないアプリを目指している」(日高徹哉PRマネジャー)。これまで35のアプリを開発し、「彫る 銅板レリーフ」では、リアルな立体感や色合いが楽しめる。
絵画関連のスマホアプリは「絵を描く」作業を小さな画面上でいかに楽しむかを追求して開発されている。ちょっとした息抜きや遊びのつもりが、美術の才能が花開くきっかけになるかもしれない。
(証券部 青木真咲)
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