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認知症ケアは在宅中心に 国の5カ年計画、来年度から 訪問治療で入院抑制

2012/10/26 日本経済新聞 夕刊

厚生労働省が来年度から始める認知症施策の5カ年計画(オレンジプラン)は「住み慣れた地域で暮らし続けることができる社会の実現」を掲げ、在宅中心のケア体制の確立を目指している。早期診断を担う医療機関を増やしたり、発症初期の高齢者宅を訪問する専門家チームを作ったりするのがプランの柱。先行的な取り組みの現状と実現に向けた課題をまとめた。

その場で処方箋

特別養護老人ホームで認知症の高齢者を問診する上野医師(16日、千葉県旭市)

「調子はどうですか」

「暴れたり騒いだりすることが少なくなりました」

10月中旬、千葉県旭市の特別養護老人ホーム「やすらぎ園」に精神科病院「海上寮療養所」(同市)の上野秀樹医師が看護師と一緒に訪れた。入所する認知症の高齢者の様子などを施設職員から聞き取って携帯用の電子カルテ端末に打ち込み、薬の処方箋を作成。本人を問診して症状を確認し、職員にはケアの留意点を助言した。

認知症による妄想や徘徊(はいかい)などが悪化すると、ケアが家族や施設の手に負えなくなり、精神科病院に入院させるケースが少なくない。だが上野医師は「長い入院は本人の生活能力が低下するなどのデメリットがある。適切なケアや対応の工夫で多くの症状は改善する」と話す。

上野医師は2009年11月から認知症の高齢者宅や施設への訪問診療を開始。これまでに診察した妄想や徘徊などの症状のある約700人のうち、実際に精神科病院に入院したのは約20人にとどまるという。家族や施設からの相談には携帯電話で対応しており、やすらぎ園の田辺波津枝施設長は「通院に付き添うだけでも家族や職員の負担は大きい」と歓迎する。

厚労省によると、08年に認知症で精神科病院に入院した人は5万2千人で、1996年(2万8千人)の2倍近くに増えた。入院者の半数は退院までに半年以上かかっている。

同省は海上寮診療所のような取り組みを広げ、入院を減らしたい考え。5カ年計画には、早期診断などを担う医療機関を現在の約170施設から500施設に増やすことを盛り込んだ。ただ訪問診療は1日に診られる人数に限りがあるうえ、入院と比べて収入面の条件が悪い。こうした点をクリアすることが普及に向けたカギとなる。

福井県敦賀市の敦賀温泉病院は認知症に詳しい看護師やソーシャルワーカーらが主に2人1組で「お出かけ専門隊」として家庭を訪ね、症状が初期のうちから積極的に支援している。厚労省が各市区町村に設置している地域包括支援センターに家族などから相談があった場合、病院に連絡してもらう仕組み。玉井顕院長がボランティアで続けてきた自宅訪問を10年から組織化したものだ。

認知症が疑われる人や家族には、半年ほどかけて病気や治療の概要だけでなく、日常の心構えなども教える。玉井院長は必要に応じて自宅に足を運び、生活ぶりも確かめる。

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