電車の中で作曲も スマホの音楽アプリ多彩に
ギター・ドラム…楽器演奏も楽しく
ギターやピアノ、ドラムなどの楽器演奏をいつでもどこでも楽しめる。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)など携帯端末向けにこんなアプリが増えている。インストールすれば端末が小型なので持ち運びが楽で、価格は大半が無料から3000円以下と実物の楽器よりずっと安い。通勤中など空いた時間に思い浮かんだ音楽を録音したり、楽曲を交流サイト(SNS)を通じて仲間と共有できたりするため、利用する人が初心者からプロまで広がっている。
「価格が安く、手軽に利用できる。iPhoneやiPadを使って、近々またバンド活動をやりたい」。都内に住む会社員、小笠原ヒロノさん(32)は仲間とバンドを組んでいたが解散。1人で音楽活動を続けようと思ったときに、手軽さに目をつけて使い始めたのがiPhone向け音楽アプリだ。
基本的な楽器内蔵
重宝しているのが「ガレージバンド」。ギターやドラムなどの基本的な楽器がアプリに内蔵されており、操作も簡単だ。価格もたった450円。ギターやドラムを買えばそれぞれ数万円はする。「複数の楽器をいつでも気軽に持ち運べるメリットもある」(小笠原さん)
パーティーや宴会での話題づくりに活用する人もいる。東京都目黒区の男性会社員(27)は友人の誕生日パーティーで「ピアノのアプリでバースデーソングを生演奏し盛り上がった」。
歌声や楽器の演奏を録音し、ネット上に公開。気に入った人が重ねて録音するなどで合唱して楽しめる音楽コラボアプリもある。「ナナ」は8月下旬から無料公開し、約2カ月で利用者が4000人を超えた。千葉市在住の小堂美花子さん(21)は「全く知らない人が歌声を重ねてくれるなど、音楽で色々な人とつながれるのが楽しい」と話す。
同アプリを提供するnana music(米デラウェア州)は現在は日本に限定している同アプリを11月をメドに全世界で配信する方針。1年後に利用者を100万人に増やすことを目指している。
音楽アプリの利用者は日常的に音楽に携わるプロにも広がっている。楽曲作りに必要な機能を盛り込んだ「ナノスタジオ」(1300円)を愛用する作曲家のナカシマヤスヒロさん(30)は「電車の中で頭に浮かんだ曲をメモできる」と利点を話す。
会社員だが、定期的に音楽活動もしている東京都新宿区在住の40代男性、カズマシノさんはiPhoneやiPadを楽器として2カ月に1度はライブを開く。楽曲はほぼナノスタジオで作成。できた曲は音楽関連のSNSで仲間と共有するなど「仕事で忙しい中でも音楽を楽しめるようになった」と満足げだ。
活動支援の動きも
こうした音楽活動を支援する動きもある。エイベックス・グループ・ホールディングスと新星堂は2月、携帯端末アプリを使った奏者を対象に「アップレーヤー コンテスト」を実施。優勝者には賞金100万円を贈呈し、エイベックスからのデビュー特典も付けた。約100組が応募し、最終的に7組が決勝に進出。楽器アプリ以外に日本刀や花火の音が出るアプリを使い、高評価を得た「iNinjaz」が優勝した。
エイベックスによると、同グループは早ければ年内にもデビューする。第2回コンテストも来年2月に実施予定で、出場者を募集している。音楽アプリの知名度も高まっており、応募は100組を超えそうだという。
音楽アプリは増加傾向にあり、アップルの携帯端末向けだけで2万3千以上。アンドロイド向けを加えると数はさらに膨らむ。楽器アプリの醍醐味は本物の楽器を弾けない人も簡単に音色を奏でられる点。利用者は「音楽を始めるハードルが低くなった」と口をそろえる。今後は主にスマホ経由でインターネットを利用する若い世代から、音楽アプリをインストールしたスマホをメーン楽器とするアーティストが登場するかもしれない。
(消費産業部 上野宜彦)
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