ライフコラム

エコノ探偵団

コメの新ブランド、なぜ増える 背景に温暖化も

2012/10/23 日本経済新聞 プラスワン

「最近、知らないおコメのブランドを米穀店やスーパーでよく見掛けるわね」。近所の主婦の言葉に探偵、深津明日香が反応した。「そういえば、先日実家から送られてきた新米も初めて聞くブランドだったわ。何が起きているのかしら」

■第一の目的は農家の収入増

「おなじみのコシヒカリも売っているけど、新品種が目を引くわね」。近所のスーパーや米穀店を回った明日香は驚いた。「ゆめぴりか」「さがびより」「つや姫」など初めて見る銘柄が目白押しだ。

「コメ産地は品種開発を進めており、今後も続々登場するでしょう」。米穀店のスズノブ(東京都目黒区)社長で、五ツ星お米マイスターの資格を持つ西島豊造さん(49)が教えてくれた。各産地のコメが約50種類ずらりと並び「1キログラムずつ買い、おかずごとに使い分けるお客さんもいる」。

産地の事情を聞こうと、明日香は新幹線に飛び乗り山形県に向かった。つや姫は山形県農業総合研究センターが開発し、2010年産から一般販売している。「高く売れるコメを作り農家の収入を増やすのが第一の目的です」と、県庁県産米ブランド推進課の卯月恒安さん(51)は説明する。

同県では「はえぬき」という品種が多く栽培され、味の評価も良いが、知名度の低さが響き高値では売れなかった。しかし、コシヒカリを育てても「本場」とされる新潟県魚沼産を超える市場の評価を得るのは難しい。そこで、新品種を生み出したという訳だ。

県などが農家に栽培法を指導し、高い品質を保てるよう協力した。吉村美栄子知事らによる宣伝も奏功し、市場評価は上々。11年産の出荷業者の相対取引価格(玄米60キログラム)は1万8000円程度と、新潟県産コシヒカリとほぼ同水準。はえぬきより2割以上高い。

■温暖化で品質低下、暑さに強い品種の開発急ぐ

日本人の食生活が欧米化し、コメの国内需要は減少傾向にある。ピーク時の1960年代後半には生産量は1400万トンを超えたが、11年に856万トンまで落ち込んだ。その一方でインターネット販売などコメの販路も多様化してきた。家電量販店では10万円を超える高級炊飯器の人気も高い。消費者が求めるコメの味の良さや品質の高さが、新たな産地間競争を引き起こしている。

次に明日香は新潟県にも足を伸ばした。同県農業総合研究所では、17年からの一般流通を目指して新品種を開発している。育種科長の田村良浩さん(51)の話は意外だった。「温暖化への対策が目的の一つです」

「どういうこと?」。明日香は首をかしげた。「穂が出てコメが実る時期に気温が高すぎると粒が濁ったり割れやすくなったりします。それを品種改良で起きづらくするのです」と田村さん。猛暑だった10年の新潟県産コシヒカリは、品質の高さを示す1等米の比率が2割程度と過去最低だった。温暖化対策が欠かせなくなり、沖縄県石垣市の水田も使い暑さに強い品種の開発を急いでいるという。

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