出産直後の赤ちゃん抱っこ「カンガルーケア」に注意容体急変の報告も

生まれたばかりの赤ちゃんを母親が抱っこする「カンガルーケア」。母子の絆を強め、母乳保育が進みやすいなどの効果があるとされるが、赤ちゃんは体の働きが不安定なので注意が必要だ。ケア中に容体が急変し、障害が残ったとして訴訟になるケースもある。お産施設側にはケアの様子を観察するなど安全への十分な配慮が求められている。

生まれた直後の赤ちゃんを抱くカンガルーケア(東京都葛飾区の葛飾赤十字産院)

「病院の安全対策がしっかりしていれば、娘が重症になることはなかったのでは」。横浜市の会社員の女性(40)は訴える。

昨年2月、実家がある福岡市の病院で長女を出産した。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)と診断され、子宮収縮剤を使った予定より早いお産だったが、長女は2938グラムで、標準より大きい赤ちゃんだった。

約1時間半後、分娩室のベッドで15~20分間、カンガルーケアを実施。長女はあまり泣かず、母乳も飲まなかった。長女の容体がおかしいことに助産師が気づいたのは出産の約12時間後。心臓マッサージで一命をとりとめたが、脳に酸素が十分に送られなかったことが原因で、人工呼吸器が必要な状態が続いている。

女性は「容体がどの時点で悪くなり、何が原因だったのかは分からない。ただ、病院からカンガルーケアに関する事前の説明は一切なく、経過観察も不十分だった」と話す。

2000年以降に普及

カンガルーケアは母親が赤ちゃんを胸に抱き、お互いの皮膚を接触させる保育方法。その姿がカンガルーの子育てを連想させることから名付けられた。1970年代、保育器不足に悩む南米コロンビアで始まり、日本では95年、横浜市の病院で初めて実施された。

スキンシップにより赤ちゃんの呼吸が安定したり体温を保ったりする効果があるほか、母子の絆が強まることで母乳保育が進むとされる。当初は早産などで小さく産まれ、新生児集中治療室(NICU)に入る赤ちゃんが対象で、世界保健機関(WHO)が96年、正期産(妊娠37~41週のお産)の赤ちゃんにも適用する指針を示した。

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