この熾烈なる無力を アナレクタ4 佐々木中著物書く人の現在、縦横に捉える

2012/10/12付
(河出書房新社・2400円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

「アナレクタ」というのは「拾遺余録」の意味。佐々木による「アナレクタ」のシリーズも4冊目になる。

 様々なタイプの文章が収録されている。誤解して欲しくはないが、振れ幅が大きい。もっとも緻密で、読む側も集中力を要するのは、『古井由吉自撰(じせん)作品』の解説のために書かれた「古井由吉、災厄の後の永遠」だろう。対照的に、もっともリラックスして読めるのは、女優・相沢紗世との対話ではないかと思う。

 佐々木中の小説は、日本語を用いた表現の現場へと常に読者を送り返し続けるし、彼の書いた思想書も、どこか読者を原点回帰させるところがある。

 だが、アナレクタ・シリーズにはそれがない。いま生きて呼吸している、物を書く人の現在の姿ができるかぎりそのまま現れている。

 佐々木のことだから一筋縄にはいかない。太古の文書の話から、震災後の文学をめぐる話題まで、縦横に移動する。

 足取りが軽やかだ、というのではない。どちらかというと重々しく、必要に応じて動き、筋を通しながら佐々木は移動する。その振幅の見事さに、つい引き込まれる。

★★★★

(批評家 陣野俊史)

[日本経済新聞夕刊2012年10月10日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

この熾烈なる無力を ---アナレクタ4 (アナレクタ 4)

著者:佐々木 中.
出版:河出書房新社
価格:2,520円(税込み)