2012/10/9

「3連休に旅行する人の数に平均消費額を乗じた額や関連産業への波及効果などを積み上げた数字です。あくまでも事前の推計値ですが、実際に計測しても同様な結果が得られるでしょう」。丁野さんは仮に2週間の連続休暇を好きな時期に取れる制度が導入されたら、4兆5000億円の経済効果が生まれるとの試算も示している。休日1日で3000億円程度の経済効果が生まれる計算だ。

報告を聞いていた所長に「休みが増えたからと言って旅行の費用を出せる人ばかりではないはずだ。本当に消費全体が増えているのか?」と突っ込まれた明日香。そこで第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さん(45)に助け舟を求めた。

熊野さんは総務省の家計調査をもとに、1世帯当たりの1日の平均消費額を試算した。07~11年の平均値では、土日は平日よりも消費額が多く、GW並みの水準だ。一方、祝日や3連休の平均は平日とそれほど差がない。

「思ったほど祝日や3連休の消費が多くないのはなぜかしら」。「休みが増えればショッピングやレジャーなどにお金を使う一方で、限られた所得の中でやりくりし、別の消費を減らしている人が多いからです」と熊野さん。例えば大型連休では医療費や住居への支出が減る傾向があるという。休日の経済効果を試算する場合、こうした負の効果は算出されず、過大な推計になりがちだ。

「他で節約」考慮せず、試算過大

しかも、休日の経済効果の試算は「所得は一定」との前提に基づく。厳しい経済環境のもとで人件費を減らす企業は多く、休みが増えても所得が減るなら消費者の財布のひもは固くなる。所得の減少を防ぐために社員に有給休暇の消化を義務づけると企業の負担が増し、国際競争力が低下する可能性もある。また、働いた日数に応じて収入が決まる非正規社員にとって休日増加は収入減になる。「連休が増えると消費が伸びるとは断定できないのです」と熊野さんは解説する。

「ちょっと待ってください」と声をかけてきたのは世界の休暇制度を研究する慶応大学教授の桜本光さん(65)。桜本さんは現在は有給休暇の取得率が50%を下回る日本で、完全取得が定着すると16兆円の経済効果があると推計した。「休暇の増加で労働力が足りなくなる企業が代役を求めれば、働く人が増えて総所得も上昇します。企業の人件費負担は一時的には上昇しますが、休日を意識した新たなサービス産業が生まれ、企業全体の収入が増える好循環が生まれます」と休暇の効用に期待する。