一口に乳酸菌といってもカゼイ菌など約400種が知られる。ビフィズス菌もロングム菌など約40種ある。どの種が免疫系などにどのように働くのか、メカニズムの解明研究が進み始めた。

免疫系にも作用

東京大学の戸塚護准教授らは乳酸菌の一種、ガセリ菌の特定の株が炎症の発生にかかわる免疫細胞の働きを抑制するのをマウスを使った実験で確かめた。食べ物によるアレルギー反応を抑える効果などが期待できるという。

明治は乳酸菌のうちブルガリア菌の一つが作り出す植物繊維に似た多糖体と呼ばれる物質が、インフルエンザウイルスなどに対抗する免疫細胞の働きを高めることを見いだした。サッポロビールは乳酸菌が作りだし、腸管の悪玉菌に対する防御機能を高める働きを持つ物質を突き止めた。

ヨーグルトを食べても乳酸菌やビフィズス菌が胆汁酸などに打ち勝って腸に到達できるとは限らない。東京大学の服部正平教授は成人18人に一定のルールでヨーグルトを摂取してもらい、便を回収。高速シーケンサー(遺伝子解析装置)でゲノム(全遺伝情報)を分析した。菌株によって腸への到達度合いが大きく違うほか、摂取によって変化する腸内菌の種類もかなりばらつきがあることがわかった。

商品選びの際は、整腸作用などが科学的に認められたことを示す特定保健用食品の表示が参考になる。ただ、免疫作用は対象外なので、効果がわかりにくい面もある。

「一粒にビフィズス菌数十億個入り」などとうたった錠剤などの広告も多いが、山城特任教授は「単に数が多ければよいわけではない」と指摘する。辨野特別招聘研究員は「ヨーグルトだけを食べるのではなく、排便を促す繊維が豊富な野菜や豆類もとり、バランスのよい食事を心がけることが必要」としている。

(編集委員 安藤淳)

ひとくちガイド
《本》
◆善玉菌、悪玉菌の特徴や働き、ヨーグルト摂取など食事を通して腸内環境を良くする方法を知るには
「健腸生活のススメ」(辨野義己著、日本経済新聞出版社)
《インターネット》
◆乳酸菌やビフィズス菌の基礎知識、健康とのかかわりをまとめた、全国発酵乳乳酸菌飲料協会のホームページ(http://www.nyusankin.or.jp/)

[日本経済新聞朝刊2012年9月30日付]

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