N
くらし&ハウス
暮らしの知恵

2012/9/27

暮らしの知恵

1本だけで「1」書く練習

1本の箸を中指と人さし指で持って、親指をそえる。そのまま数字の1を書くようにゆっくり上下に動かしてみる。この練習は正しく箸を持つための一般的な方法だという。

実際に試すと、うまく動かせない。あまりに記者が不器用なので吉田さんが驚いていた。

中指と人さし指を輪ゴムで固定してしばらく練習することにした。1本を動かすだけなので、ペンでも練習できる。職場の会議中、通勤途中の地下鉄、寝る前でも暇さえあれば数字の1を書き続けた。

練習しながら思った。なぜ箸を正しく持てる方がよいのか。箸の研究をする千葉大学大学院准教授の下村義弘さんに聞いてみた。

正しい持ち方、物をつかむ操作性が抜群に高く

下村さんは、普段は箸を使わない手(非利き手)で、正しい持ち方と間違った持ち方をすると、何が違うのかを比較した実験をしている。非利き手で実験するのは、癖のない白紙の状態から調べるためだ。その結果、正しい持ち方のときは手指の筋肉を効率的に使い、物をつかむ操作性も抜群に高いことがわかった。

ただ下村さんは「小脳にすり込まれた長年の癖を直すのはかなり難しい」という。少し心が折れた。

気を取り直して、練習開始から5日目、下の箸を親指の付け根に置いて、上の箸を動かしてみる。だが箸先がうまく合わない。下の箸があるとそちらに意識がいく。下の箸は左手で支えながら箸先を合わせる感覚を得ることにした。

食事のときは、今まで通りでOK

練習と並行して正しい持ち方で食事をするようにしたが、気をとられておいしくない。練習も苦痛になってきたため、改めて吉田さんに会った。「食事はこれまでの慣れた持ち方で食べましょう。食事がつらくなると断念しがちです」。慣れた持ち方で食べるようにすると、後ろ向きな気持ちがすっと抜けた。

注目記事
次のページ
ペンの持ち方も自然に変わる