ロック・オブ・エイジズ

1980年代ロサンゼルスの音楽シーンが当時の大ヒット曲とともに甦（よみがえ）る。

現在もブロードウェイで上演中の同名ミュージカルを『ヘアスプレー』のアダム・シャンクマンが監督して映画化。既成の曲で構成されたジュークボックス・ミュージカルと呼ばれる形式で作られている。

87年のロサンゼルス、サンセット大通り。歌手を夢見る少女シェリー（ジュリアン・ハフ）と、彼女に一目惚（ぼ）れしたライブハウス"バーボンルーム"で働くミュージシャン志望の若者ドリュー（ディエゴ・ボネータ）。若い彼らを中心にドラマは展開する。

そこに絡むのがロック・グループ「アーセナル」を"バーボンルーム"のコンサートで解散、ソロになるというのに人気に溺れて昔日の面影はないヴォーカルのステイシー（トム・クルーズ）、倒産寸前の"バーボンルーム"のオーナー（アレック・ボールドウィン）と彼に煮え湯を飲ませるステイシーの強欲マネージャー（ポール・ジアマッティ）、店の前で"ロック追放"を叫ぶ市長夫人（キャサリン・ゼタ=ジョーンズ）など、強烈個性の大人たち。

人気、実力の備わった俳優たちが集合。全員が吹き替えなしで歌い、トムはギター演奏も。キャサリンはダンサー出身の本領を発揮するなど、芸の力が生む存在感をツボを心得たシャンクマンの演出で噴出させ、あの時代へと誘う。

87年といえば現在50歳のトム・クルーズが『トップガン』（86年）の大ヒットでハリウッドのトップ・スターの座へと駆け上がっていた時代。以来、浮き沈みの激しい映画業界でスーパースターの座を守り、そのオーラを演じるロックスターに重ねて見せるトムはたいした役者だ。彼を見ているうちにあの時代が一気に甦った。そして過激なロックもいつか懐メロになるときがくる、としんみり。

2時間3分。

★★★★

（映画評論家　渡辺　祥子）

［日本経済新聞夕刊2012年9月21日付］