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エコノ探偵団

先進国で上昇する「エンゲル係数」 背景にあるのは

2012/9/18 日本経済新聞 プラスワン

 「節約しているはずなのに食費がかさむの。夫に『エンゲル係数が高い』と言われたわ」。事務所に寄った近所の主婦がぐちをこぼした。探偵、松田章司が反応した。「エンゲル係数が上昇しているのならば何を意味するのか。すぐに調査だ」

■所得減、食品の値上げ続々

 「エンゲル係数とは消費支出に占める食料費の割合か。生活費の何%が飲食費かという値だ」。章司はインターネットで調べた。豊かになるとエンゲル係数が下がるといわれる。終戦直後は2人以上世帯で66%前後だったが、その後はほぼ一貫して下落してきた。

 総務省統計局の家計調査によると、エンゲル係数は2005年度の22.9%を底に上昇基調に転じ、11年度は23.7%に達した。この間に消費支出は5.1%減ったが、食料費の減少幅は1.6%にとどまった。

 「所得減による消費支出の抑制が係数上昇の主因では?」。章司が尋ねると第一生命経済研究所の主席エコノミスト、永浜利広さん(41)はうなずいた。「それもありますが、食料単価の上昇は無視できません」

 永浜さんは05年度から11年度までにエンゲル係数が0.8ポイント上がった要因を係数計算式の分母側の消費支出(総消費量×総単価)と分子側の食料費(食料消費量×食料単価)を構成する4つに分け、分析した。

 このうち上げ要因は総消費量減(1.1ポイント)、食料単価上昇(0.8ポイント)、総単価低下(0.1ポイント)の3つ。下げ要因は食料消費量減(1.2ポイント)だけだ。

 章司は納得した。「所得が減って節約したが、食料単価の上昇で係数が上がったのか」。消費者物価指数をみると、00年以降は食料、光熱を含む生活必需品が値上がりする一方、ほかの“ぜいたく品”の価格は下がる傾向が鮮明になった。

 章司は大手食用油メーカー、日清オイリオグループに急いだ。同社は10月出荷分からの値上げを表明したばかり。06年度以降は年平均3回の値上げを発表してきた。「なぜ何度も値上げをするのですか」。専務執行役員の芋川文男さん(63)が答えた。「菜種や大豆など製油原料の国際価格が上がっているからです」

 新興国の購入が増え、低金利で膨らんだ資金が市場に流れ込む。国際指標である米国の大豆価格は06年秋の3倍程度。連動する菜種も高い。今夏は米国が大干ばつで生産減の観測だ。

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