逆光の失敗写真 無料ソフトでここまで直せる
デジタルカメラでこれまで撮影した写真を見返すと、被写体がぶれている、照明のせいか色が変わっているなど、失敗にはいくつかのパターンがあることがわかった。なかでも最も多かったのが、後ろが明るいため、顔が暗くなってしまった「逆光」の失敗だ。
写真を見ると、仕方がないと思えるケースもある。「訪れた時間のせいで太陽を背にした写真しか撮れなかった」「山などのランドマークも写真に入れようとしたら、カメラがそちらに露出を合わせてしまった」といった例だ。
カメラジャーナリストの磯修さんによると「パソコンの無料ソフトを使えば、逆光の写真はある程度修整できる」。そこで逆光写真の復活に挑戦してみた。
写真の修整ができる無料ソフトはいくつもある。今回は多くの人が利用でき、磯さんもお薦めの「ウィンドウズ・ライブ・フォトギャラリー」を使った。マイクロソフトの製品で、最近のウィンドウズパソコンにはあらかじめ入っていることが多い。
最初に挑戦したのは2枚。写真Aはベランダで撮影した子どもの写真。外が明るいので、子どもの顔が影になっている。写真Bは富士山をバックに撮影した自分の写真。富士山に明るさを合わせたためか、顔が暗くなっている。
まずソフトが写真を分析して修整する「自動調整機能」を利用してみた。
写真Aは顔の明るさは変わっていない。その代わりに、後ろにある手すりが水平になった。修整ソフトは逆光よりも写真の傾きが問題、と判断したようだ。一方、写真Bは全体的に明るくなったが、まだ表情まではよくわからない。
写真Aは子どもの表情をはっきり見えるようにしたい。写真Bは顔と富士山両方が見えるバランスにこだわりたい。磯さんに相談すると「そういう場合は露出を調整すればいい」という答えが返ってきた。
ヒストグラムの使い方覚えよう
フォトギャラリーにある「露出の調整」ボタンを押すと「明るさ」「コントラスト」「シャドウ」「ハイライト」という操作レバーと「ヒストグラム」というグラフが表示された。何か難しそうだが、磯さんによれば「明るさとヒストグラムだけで細かな調整ができる」という。
ヒストグラムは「分布図」のことで、例えば試験で80点の人が何人、40点の人が何人という集計を示す場合などに使われる。デジカメの場合は「その写真の中に、どのくらいの明るい点があるかを示す」(磯さん)。横軸は明るさを意味し、左側が黒い部分、右側が白い部分を示している。縦軸は色の量で、グラフの高さが高いほどその色の量が多いことを意味する。
左上に掲載したヒストグラムは暗い室内を撮影した写真のものだ。グラフの山が左半分にしかない。「山がない部分は情報がない。そこを省くだけで明るさのバランスが良くなる」という磯さんの言葉に従い、ヒストグラムの下にあるボタンを動かし、グラフの空白部分をなくしてみた。すると写真全体が明るくなり、室内の様子が見えるようになった。
さっそく写真AとBで試してみる。全体的に明るくなったが、写真Bはまだ表情がよく見えない。
こういう場合は「明るさ」を調整してからヒストグラムを変えるといい、と磯さんからのアドバイス。明るさだけで調整すると、暗いところまで白っぽくなってしまう。ある程度明るくしたらヒストグラムの調整に移るのがポイントだ。
修整練習すれば撮り方も上手に
何度か挑戦した結果、写真Aは子どもの顔がはっきりと見えるようになった。写真Bは試行錯誤を繰り返して富士山を残しつつ、自分の表情が見えるバランスを探していった。
その後、パソコンのハードディスクに入っていた約100枚の失敗写真の修整に挑戦した。その結果、単純に暗い写真はヒストグラムの調整だけでずいぶん修整できると感じた。明るいところと暗いところがある逆光写真は「明るさ」→「ヒストグラム」という手順をとったほうが、満足できる仕上がりに近づいた。
失敗写真を修整していると、撮影したときに自分がどんな写真が撮りたかったか、その意図が見えてくる。磯さんによれば「修整をすると、写真を撮るのも上手になる」そうだ。
今回、感じたのは「やり直せる」楽しさ。ヒストグラムの情報のある部分まであえてカットしてみても「意外にいいんじゃないか」という写真になったこともあった。写真の修整は「とことん試してみる」ことが大切と感じた。
ただ自分は「よくなった」と思ったのに、家族に見せたら「前のほうがよかった」といわれることも。元データはしっかり保存しておきたい。
(編集委員 大谷真幸)
[日経プラスワン2012年9月15日付]
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