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対話やマージャン、認知症予防に新たな試み 脳活性化の効果を今後検証へ

2012/9/11 日本経済新聞 朝刊

高齢者の認知症を防ぐため、新しい取り組みが広がっている。テーマやルールに沿って会話を重ねたり、みんなでマージャンをしたりすることで、脳を活性化させようとの試みだ。医学的な検証はこれからだが、脳の衰えやすい部分が活発に働くことで、認知機能が鍛えられるという。

8月中旬、千葉県柏市にある介護予防施設の一室。高齢者6人がスクリーンを見ながら会話をしていた。カラフルな色で絵を描いた小石の写真を映しながら、佐藤由紀子さん(70)が話す。「パンに見立てて描いたものは本物そっくり。ついかじりたくなります」

それを聞いた1人が興味津々に質問する。「誰が描いたのですか」。佐藤さんはうれしそうに「友禅染の絵師さんだそうです」と答えた。

質問するため集中

認知症の予防を目的とした「ふれあい共想法」の一場面だ。各自が持ち寄った思い出の写真をスクリーンに映し、参加者同士が対話を重ねる。1人が説明する持ち時間は5分、その後質疑応答に5分かける。全員が順番に話し手と聞き手になるよう工夫している。

考案した千葉大学の大武美保子准教授は「双方向の会話によって脳が活発に働くようになる」と話す。写真を見ながら記憶を呼び出し、考えをまとめて伝え、他人の質問や興味に注意を向ける。こうした行為によって、知覚・注意、記憶、思考といった認知機能が高まるという。

大武准教授は2008年、NPO法人ほのぼの研究所(千葉県柏市)を設立し、講座などを開いてきた。11年、長崎北病院(長崎県時津町)が軽いアルツハイマー病患者向けの訓練法として導入。医療や介護の現場に広がりつつある。

従来も、茶話会などを認知症予防に役立てようという試みはあった。ただ高齢者は話す人はしゃべり続けるが、話さない人はだまりがち。双方向の会話が成立せず、効果が薄かった。

共想法では、制限時間内に何をどんな手順で話そうかと考えたり、質問するために集中したりするため、頭をフル回転させる。認知症の初期症状が出始めていた70歳代の男性は1年ほど続けると、ほかの人の話を理解して会話できるようになったという。今後、疫学調査を通じて認知症予防の効果を詳しく検証する。

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