五輪後に景気が悪くなる理由 夏季6大会で例外は1つだけ

株式相場などを分析する大和証券のチーフクオンツアナリスト、吉野貴晶さんに聞くと「夏季大会が4年に1度の米大統領選と重なる影響もあると思います」と指摘した。米国では秋の大統領選をにらみ、政権が景気対策を打ち出すことが多かった。世界最大の経済大国の景気が良くなれば、開催国の輸出も伸びて経済が潤うという。

吉野さんが北京五輪までの6大会で開催国の株価指数を調べたところ、五輪後の反動不況を懸念して停滞するが、競技が始まるころから米景気の盛り上がり期待もあって反発。しかし米大統領選が終わると、翌年に再び停滞する傾向があるという。章司は「開催年に押し上げられた分、翌年には株価も景気も弱含む関係がありそうだ」と思った。

経済効果以外への期待も

国より開催地は大きな打撃を受けることが多い。98年に冬季五輪を開いた長野県。「知名度向上などもありましたが、地元経済は五輪の頃がピークでしたね」。長野経済研究所(長野市)の小沢吉則さんが振り返る。長野新幹線や上信越自動車道など、7~8年分とされる公共事業が一挙に進んだ。同研究所の推計では1兆6千億円の関連投資が県経済の成長率を約40%押し上げた。

日銀が企業に景気認識を聞く企業短期経済観測調査(短観)でも、県内の建設業や観光業など非製造業の景況感は95~97年、全国を大幅に上回った。だが大会後は建設業の倒産が急増。短観の景況感は10年間ほぼ一貫して全国を下回り、県財政も悪化した。

「景気には悪い影響が多そうなのに、東京都などは20年大会に立候補している。なぜなんだ」。章司は急いで都庁に向かった。

応対してくれた招致計画担当課長、木村賢一さんは「財政悪化を不安に思う人も多いようですが、既存施設を改装して使うなど工夫します」と強調する。選手村は都の土地に民間が造り、終了後は住宅に改装して売却する。運営費はチケット収入や国際オリンピック委員会の予算などで賄い、税金は使わないそうだ。

「試算では施設の建設やテレビの買い替えなど直接効果は全国で1兆2200億円。波及効果は2兆9600億円になります」と木村さん。章司は「日本の国内総生産(GDP)は約500兆円もあるから、良くも悪くも64年大会のような影響はなさそうだ」とつぶやいた。

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