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エコノ探偵団

五輪後に景気が悪くなる理由 夏季6大会で例外は1つだけ

2012/9/4 日本経済新聞 プラスワン

「ロンドン五輪で日本選手が大活躍したな」。スポーツ好きの友人が探偵、松田章司に話しかけてきた。「観戦のために世界中から人が集まり、期間中は開催国の景気がよくなりそうだけれど、終わったらすぐ悪くなったりしないよな」

■投資や消費の反動 一気に

「あれ?」。章司が資料を調べると、五輪を開いた後、景気が悪化した国の方が多かった。2008年に北京五輪を開いた中国は、前の年に14%を超えた経済成長率が開催年と翌年は9%台に鈍化。その前のギリシャも開催後にブレーキがかかり、今は債務問題で国中が大混乱している。

1988年のソウル五輪以降、夏季6大会で成長率を比べると、開催年よりその翌年が上昇したのは米国だけ。日本でも64年の東京五輪の後、「昭和40年(65年)不況」があった。

「観光客が来て、景気は良くなりそうですが」。章司はスポーツと経済の関係に詳しい早稲田大学教授の原田宗彦さん(58)に疑問をぶつけた。原田さんは「五輪は一種の公共事業。前倒しで国や企業が投資したり、市民が消費したりした反動が出てくるのです」と教えてくれた。特に新興国は遅れているインフラを一気に整えようと巨額のお金を投じる。高速道路や新幹線が次々できた60年代の日本はその典型だ。

ギリシャは五輪開催に合わせてアテネ市内の交通網などを整備した

一方、既にインフラが整っている先進国は途上国ほど投資は伸びず、経済規模が大きいので影響も少ない。国民の価値観が多様化しており「五輪を冷めた目でみるので消費もあまり盛り上がりません」という。

SMBC日興証券のチーフエコノミスト、牧野潤一さん(46)にも聞いてみた。「新興国はちょうど先進国の仲間入りをする時期に開くので、大会後は成長の勢いが鈍ることが多いんです」。例えば、ソウル五輪後の韓国は賃金が上昇。通貨ウォンの価値も上がり、輸出の勢いが落ち、高度成長期の幕が下りた。

「ギリシャ危機は五輪と関係がありますか」。章司の質問に牧野さんは「共通通貨、ユーロを導入したことで国は簡単に借金ができるようになりました。アテネ五輪でも湯水のようにお金を使いましたね」と教えてくれた。今年の開催国、英国は08年のリーマン・ショックで主力の金融業が打撃を受け、以前から厳しい状態が続いているという。

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