現在の診断ガイドラインは、米国リウマチ学会の基準をもとにしている。原因不明の痛みが全身に3カ月以上続くケースで、首や肩など18カ所の基準となる箇所を、やや強く押す。11カ所以上に痛みがあれば線維筋痛症と診断する。

これに加え、患者自身が記入する問診票を活用する取り組みもある。過去1週間で体のどこが痛んだか、痛み以外の全身症状がどれくらいあったかをもとに点数化する。「症状に合わせた治療方針も立てやすくなる」と東京医大の西岡所長は期待する。この方法が診断の支援にどの程度、役立つか調べている段階だ。

対処可能な病に

治療は薬物療法が中心。症状に応じて適切な薬を選ぶ。今年6月には米製薬大手ファイザーが開発した帯状疱疹(ほうしん)などの痛みを抑える薬「リリカ(商品名)」が、線維筋痛症にも使えるようになった。

線維筋痛症という病名で処方できる薬で「めまいなどの副作用に注意する必要がある」(西岡所長)が、痛みをうまく抑えるための選択肢が増えた。このほか、塩野義製薬と日本イーライリリーも抗うつ剤「サインバルタ(同)」を、この病気に使えるよう臨床試験(治験)を実施中だ。

線維筋痛症は医師の間でも知名度が徐々に上がっており、従来より治療に取り組みやすい環境が整いつつある。体の異変を素早く察知して治療に取り組めば、痛みがかなり軽減され日常生活を取り戻せるケースもまれではなくなった。「症状が改善しない難病ではなく、対処できる病気として黎明(れいめい)期を迎えた」と西岡所長は話す。

一方、他の病気とはっきり区別するのに現在の診断方法はまだ不十分だと指摘する専門家もいる。「精神面の問題から全身の痛みが起こることもある。線維筋痛症をはっきり見分けられるようにする必要があるだろう」と北里大学東病院の宮岡等副院長は訴える。病気に限らず痛みに悩む患者は多い。適切な治療ができる体制の整備や、発症メカニズムの解明なども欠かせない。

(鴻知佳子)

[日本経済新聞夕刊2012年8月31日付]

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