2012/8/28

例えば花の球根に関するバブル。17世紀にオランダでチューリップが高騰したのが有名だが、その後も18世紀にヒヤシンスで、20世紀にはグラジオラスで起きている。他にも、実態に乏しい新事業や土地なども対象になってきた。「最後は破綻する、とわかった上でバブルに乗る人もいます。破綻まではもうかるからです」と翁さん。売り抜けられれば問題ないが、タイミングを見極めるのは難しく損が出るときは巨額だ。

次に明日香は、慶応大学准教授の小幡績さん(44)を訪ねた。「バブルのきっかけは何でもよく、皆が同じモノを欲しくなったときに起きます。切手は歴史がありコレクションしやすいため、起きやすいのでは」とまとめてくれた。

「君は手紙をよく書くのかな」。所長の不思議な質問に、明日香はけげんな表情。「今月の給料をコレクションの古切手で払うつもりですか。お断りします」

<発祥は1840年英国 日本は明治初期、飛脚から脱却>

一部の記念切手にはシール式が採用されている

世界初の切手が誕生したのは、1840年の英国。当時の郵便は料金が届け先によって異なるうえ、高額で一般人は利用しづらかった。そこで、届ける距離にかかわらず全国均一料金を前払いするという単純な仕組みにすることで、料金を大幅に下げた。その証書が切手だ。改革の効果で、郵便物は5倍近くに増えたといわれる。

日本で初めて発行されたのは明治初期の71年。江戸時代の飛脚から近代的な郵便制度に脱却を目指し、欧米諸国で一般的になっていた切手の仕組みを導入した。もともと「切手」とは、金銭の預かり証全般を指す言葉だったようだが、郵便切手が定着すると次第にそれを指すようになった。

郵便物に貼るため、切手の裏側に塗られるのがノリ。実は世界初の切手「ペニー・ブラック」にも塗られている。切手を切り離すための「目打ち」と呼ばれる穴も54年には登場。今のような切手のスタイルは、既に160年近く前に確立していたことになる。

近年は簡単に貼り付けられるシール式も一部の記念切手などで採用されており、「使いやすいと好評」(郵便事業会社)。だが製造コストの問題などもあり、当面はノリ方式が主流となりそうだ。

(畠山周平)

[日経プラスワン2012年8月25日付]