2012/8/28

次第に値上がりを見込んで記念切手を20枚つづりのシートで買い集める人々が増えた。「ですがファンが期待するように値上がりはしませんでした。その頃の記念切手は発行枚数が多すぎるのです」と浜谷さん。

今も5枚つづりのシートの買い取りに数万円の高値がつく場合がある「見返り美人」は、ブーム前の48年に150万枚発行された。だが切手ブームが来ると、郵政省(当時)は1種類あたり数千万枚まで発行数を増やすようになった。この結果、70年代頃から値上がり期待がしぼんだ。

日本は大半が額面割れ

金券店が集まる東京・新橋で現状を調べた。「珍しいはずの記念切手の方が安いなんて」。明日香は驚いた。店ごとに異なるが、普通切手の店頭価格は額面の90%前後。だが、記念切手は新旧ともさらに1~2%程度安く売られている。

「記念切手は使うのに不便。だから普通切手より安いのです」と声をかけてきたのは、店頭にいた金券店ラッキーコレクション(東京都千代田区)代表取締役の伊集院浩二さん(50)。切手は払い戻しができないため買ったら使うしかない。だが記念切手は大きさや形状がまちまちで、まとめて使うには向いていない。

不要になった切手コレクションも、自分で使えば少なくとも額面分の元はとれる。額面割れでも売りに出すのは、自分では使い切れない量を持っているからだ。携帯電話や電子メールが普及し、郵便を出す機会も減っている。「買ったときは損するとは思わなかっただろうに、皮肉なものね」

最近の記念切手の状況はどうなのか。明日香は郵便事業会社(日本郵便)を訪ねた。「昔と違い、実際に手紙などを出すために買う人が増えています」と小関康司さん(50)は話す。

同社が購入者へ調査したところ、保存目的で買う人はわずか2割程度。デザインの良い切手を普段使いする人が多いという。2011年度に発行した記念切手やふるさと切手などは約9億枚。年間で売れた切手のおよそ3分の1を占めた。

事務所で報告すると所長が首をかしげた。「昔、日本でバブルのような状況になったことを、中国人も知っているはず。教訓は生きていないのだろうか」

明日香は、マクロ経済に詳しい京都大学教授の翁邦雄さん(61)に意見を求めた。「歴史を振り返ると同じようなバブルが繰り返されています。過去にもあった、という経験では再発を抑止できません」