企業が小中学生向けに出前授業 その狙いは?

「塾じゃないの。普通の企業が無料で子どもの夏休みの自由研究を手伝ってくれるから助かるわ」。事務所の前で挨拶した近所の主婦が探偵、松田章司に情報をもたらした。「企業が教育に目覚めたのか。何かあるぞ」。章司は調査を始めた。

会社の活動 理解求める

エアコンを分解して構造を学ぶ子供たち(東京都新宿区のダイキン工業の体験型ショールーム「フーハ東京」)

章司は主婦の証言を頼りに東京都新宿区に向かった。ダイキン工業が2011年12月に開いた体験型ショールームで、小中学生向けの教室を開いていたからだ。白衣姿の12人の子どもが同社製品のエアコンを分解、仕組みを解説する講師の話に耳を傾けていた。小学6年の阿南由晟くんは「ダイキンという会社を身近に感じました」と話した。

空気に関する実験コーナーを常設。来場などでポイントを加算する子ども会員制度もある。同社の酒井茂孝さん(45)は章司に「理科に関心を持ち、将来は技術者として当社で働いてほしいのです」と説明した。

章司はうなずいた。「理数離れに危機感を強めているのか」。ダイキンは小学校に講師を派遣、環境保全の取り組みなどを教える“出前授業”も続けている。

経団連の関連団体、経済広報センターの佐桑徹さん(53)によると、中学、高校向けも含めた出前授業は05年ごろから目立って増えた。同センターが11年2月に発行したデータブックは100を超える企業や団体の出前授業を載せるが「実際はこれよりはるかに多いはずです」と話す。

先駆けた企業の一つがキッコーマンだ。05年9月から「しょうゆ塾」を小学校などで開く。醸造方法や残った原材料の再利用などを教える。約370人の社員が講師に登録。12年度は120~130校で予定する。

狙いの一つを同社の岡村弘孝さん(54)が明かした。「子どもたちがしょうゆを好きになれば将来の当社の業績も安定するのです」

出前授業を通じ事業への理解を子どもや親に期待する企業は多い。取り組んでいるのはコンビニエンスストアのファミリーマートのような消費者に近い企業だけではない。11年度に始めた三菱商事の井尻収一さん(54)は「総合商社の仕事はもっぱら企業相手で、一般に知られていない部分が多いのです」と述べ、好感度の向上に意欲を示した。