新橋演舞場8月花形歌舞伎次代の担い手、昼夜奮闘

「桜姫東文章」と「伊達の十役」は現在の第一線世代の手で現代歌舞伎の有力なレパートリーにした演目である。その2作を福助・海老蔵・愛之助ら次代を担う面々が昼夜に通し上演する。好企画というべきだが、その舞台はというと快打と三振、金星と取りこぼし、期待と不安がまだら模様に入り交じる。

福助の桜姫は、串田和美演出によるコクーン歌舞伎版を既に経験しているが、今日での定本となっている郡司正勝補綴(ほてい)版では今回が初役。公家の姫君が下郎の女房となって流浪する数奇な運命を、内面の一貫性を求めて狂気に陥るという重く暗いドラマにしたコクーン版と、現代人の常識を哄笑(こうしょう)するような南北劇独特の飛躍に富んだ定本版とのはざまに、やや戸惑っているかに見える。

丁寧に演じて決して悪い出来ではないが、4幕目の権助殺しが重たくなるため、大詰めで再び吉田家の姫君に戻って全幕を締めくくる軽やかなカタルシスが不足する。観客の反応にも戸惑いが見える。もっともこれには海老蔵の権助にも責任の一半がある。

「伊達の十役」は二代目猿翁がわずかな資料を手掛かりに復活した「先代萩」のパロディー劇。海老蔵が受け継いで今度が再演だが、6役を目まぐるしく早変わりして筋を運ぶのが売り物の前段が大奮闘の割りにはスカッとしないのは、発声が不安定で役ごとにひょろつくため。最難役の政岡が存外見られ、大詰めの仁木弾正と細川勝元で魅力全開。ただしこの場外ホームラン、飛距離に文句はないがファウルかフェアか判定が難しいのは、ここにも発声の難が尾を引くためだ。確固たる自分の声を持つのが急務。萬次郎が昼夜にわたり緩急自在な芝居運びでベテランぶりを発揮。23日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)