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イチからわかる

iPS細胞、実用化されると何が変わるの?

2012/8/15 日本経済新聞 朝刊

 からすけ 難しい問題だね。iPS細胞には問題はないの?

 イチ子 よくいわれるのが「がん」になる可能性(かのうせい)よ。iPS細胞を作る途中(とちゅう)で、もともとの細胞にはない遺伝子を加(くわ)えるでしょ。それによって細胞が正常に働かないがん細胞になる危険性があるの。

 からすけ だから、研究者の人は、より安全な細胞を作るために努力(どりょく)してるんだね。

 イチ子 そうね。病気の人にすぐに治療(ちりょう)をするために、iPS細胞をあらかじめ保存(ほぞん)する「iPSバンク」がもうすぐ誕生するといわれているし、様々な分野で研究が進んでいるの。iPS細胞のおかげで、医療が大きく進歩するといいわね。

■研究環境、日米で格差

麻布高等学校の鳥越泰彦先生の話
 山中教授が研究者として活躍(かつやく)する契機(けいき)をつくったのは、アメリカのグラッドストーン研究所でした。この研究所は、まだ無名だった山中教授を、その熱心(ねっしん)さを評価(ひょうか)して採用(さいよう)しました。アメリカの研究所は、豊富(ほうふ)な資金(しきん)があり、研究に集中できる環境(かんきょう)にあるといわれています。その中で山中教授は業績(ぎょうせき)を残(のこ)し、現在(げんざい)の成功の基盤(きばん)を作りました。しかし日本に戻(もど)ってみると、研究環境のひどさに絶望(ぜつぼう)したそうです。
 山中教授は、ネズミのiPS細胞を作り出すことに成功し、日本でも恵(めぐ)まれた研究環境を得(え)ることができましたが、それでも、次にヒトのiPS細胞を作ろうとしたときに、アメリカの研究チームに追(お)い抜(ぬ)かれるのではないか、と思ったそうです。山中教授は、アメリカの科学研究における資金の豊富さ、研究環境の素晴らしさ、世界各地から優(すぐ)れた研究者を招(まね)いている人材(じんざい)の豊富さを実感していたからでしょう。日本の科学研究が、今後も発展(はってん)していくかどうかは、いかに日本の研究機関(きかん)が魅力的であるか、にかかっています。
ニュースなテストの答え 1=ネズミ、2=遺伝子

[日本経済新聞朝刊ニュースクール2012年8月11日付]

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