糖尿病の自己管理、上手に 治療のカギは日常生活患者が意見交換、「やる気」刺激

糖尿病は完全に治すのが難しく、悪化させないためには食事や運動、投薬といった日常的な自己管理(セルフマネジメント)が欠かせない。病気を抱えながら社会生活を送る中では無力感や憤りを感じることもあるが、患者が前向きに治療に参加し、病気とうまく付き合う方法を教える取り組みが広がっている。

7月上旬の週末の夜、東京女子医科大の糖尿病センター(東京・新宿)に日本人の糖尿病の約9割を占める「2型糖尿病」の患者3人と家族1人が集まった。

宣言通りに運動

59歳の男性患者が「前回宣言した通り、この1カ月間毎日歩いています」と現況を報告した。もともと運動の習慣がなかったため、40分歩いて喫茶店で休憩。その後また40分歩くという。

「食べる量や食べ方に変化はありましたか」。食行動と心理に詳しい医師の塚原佐知栄さんが尋ねると、「野菜やたんぱく質を多くとるようにしていますが、体重はまだ減ってはいません。どうしたらやせますか?」と男性。すると72歳の女性患者が「私は1キロ減らせました。時間がきたら食べなくては、と考えず、少し空腹に慣れるようにしています」と自らの経験を明かした。

この集まりは同センターが昨秋から毎月1回開く「肥満でお悩みの方のためのグループミーティング」。患者同士が積極的に話し合い、自分にあった運動や食事の方法などを見つけ出すことを目的にしている。

会の名称に「肥満」とうたったのも、「太っていることを認識した上で、糖尿病の治療のことなど、問題解決の方法を自ら感じ取ってほしい」(塚原医師)との考えから。男性患者は会合に参加し「少しずつ食べる量が減り、治療に前向きになってきた」と話す。

病気を治すために、自分にもできることがある――。「自己効力感」と呼ばれるこうした感覚を患者に高めてもらうため、独自のプログラムを提供する特定非営利活動法人(NPO法人)もある。日本慢性疾患セルフマネジメント協会(東京・港)は米スタンフォード大医学部患者教育研究センターが開発した手法を使い、全国でセミナーを開催している。

同協会が主催するセミナーでは、患者が最低1人は講師陣に入る。抱える病気は、糖尿病をはじめ、リウマチやパーキンソン病、肝炎など様々な慢性疾患だ。

取り扱うテーマは薬、運動、疲労、痛みなどの管理方法、他人とのコミュニケーションの取り方など。例えば、糖尿病の治療では運動が大事と言われるが、その理由をきちんと話せる人は意外に少ない。参加者が考えを言い合うことで、自ら気づくことを促す。「医師から頑張れと言われるだけでは、どう取り組んでいいか分からないことも多い」と同協会の千脇美穂子さんは話す。

看護師らも支援

千脇さん自身もインスリンを出す細胞が壊されてしまう「1型糖尿病」の患者の1人。「血糖値がコントロールできずにいたころは、血糖値の変化記録もつけず、自分のことなのに他人にやってもらうのを待っていた」という。セミナーでは、治療だけでなく、症状で気分が良くないのに周りの人にうまく伝えられない場合の対処方法などについても学ぶという。

看護師や療養指導士などが患者のセルフマネジメントを支援する動きも広がっている。

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