「上達するには練習あるのみ」と江上さん。1日に合間をみて6玉(半分を12個)を刻んだ。疲れは出るが、だんだん慣れるもので、半分を25~30分程度で切れるようになった。

さらに上達したくて、機械を使わず包丁で千切りをする東京・銀座の老舗洋食店、煉瓦(れんが)亭を訪れた。野菜担当の斎藤豪さんは1日10玉を刻み、半分を約5分で切る。幅は1~2ミリ程度、まさにプロの技だ。

半分にしたキャベツを葉先部分と芯部分に分ける。葉先部分は包丁をリズミカルに当てられるように重なった葉を少しずらして高さを低くする。後は刃渡りの大きな包丁で一気に刻む。

■9玉を刻んで 時間短縮達成

自宅で斎藤さんの方法で試してみたが、包丁の長さが足りず、到底無理であきらめた。江上さんに教わった方法でどこまで手早くできるか挑戦することにした。9玉(半分を18個)刻むと包丁を動かすスピードも速まり、半分切るのに18分前後に時間を短縮できた。

井泉の浅野さんに再度千切りの出来上がりを見てもらい「家庭で出すには合格点」とお墨付きをもらった。やっと冷水効果を試せる。井泉では10玉の千切りしたキャベツを5分冷水にさらすが、温度は企業秘密。冷水に手を浸してみるとかなり冷たい。さらした後のキャベツは口にさらっと入り、驚くほどシャキシャキした歯ごたえだ。

浅野さんは「キャベツの量で適当な水温も、さらす時間も変わってくる」と言う。深夜に帰宅した夫をつかまえ、千切りに適した水温と時間を探った。

キャベツは片手でつかんで2回分の量に統一。水の量は千切りがしっかりつかるくらい。水温は2度、5度、10度の3段階で、ひたす時間は1分、3分、5分に分けて調べた。長時間さらすと栄養分が抜けるので注意した。水温を保つために氷を大量に入れ続け、水はしっかり切り試食した。

店のレベルに近いという意見で夫と一致したのは、2度と5度の冷水に1分間さらしたもの。2度でも5度でも大きな差はなかったので、手間を考えれば家庭では5度程度で十分だ。3~5分と時間を延ばすと逆に水気が増えておいしくない。ようやく理想の千切りにたどり着いた。

記者のつぶやき
野菜は切り方で口当たり、歯ごたえ、味さえも変わってしまう。幼い子どものために産地直送のこだわり野菜を取り寄せようとしていたが、正しい切り方を知らなければ、おいしいものも生きないと分かった。
刻んだキャベツは生はもちろん、広島風お好み焼き、ベーコンとキャベツの蒸し煮、酢漬けなどにして家族で食べた。キャベツ好きの夫のおかげで心置きなく千切りに集中できた。
(坂下曜子)

[日経プラスワン2012年8月4日付]

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