ライフコラム

エコノ探偵団

景気良くないのになぜ円高?

2012/8/7 日本経済新聞 プラスワン

■欧米への不信、日本上回る

「でも、日本の経済成長率は低いし国の借金も膨らんでいる。円が強いのは釈然としないな」。みずほ総合研究所のエコノミスト、山崎亮さん(26)に聞くと「欧州と米国の状況を見ると、円安要因を探す方が難しいかもしれません」という答えが返ってきた。

通貨の価値は他の通貨との力関係で決まる。「欧州は財政赤字や金融不安の解消など約束したことを守れるのか疑われ、米国も景気に不安が漂っています」と山崎さん。日本経済は好調ではないが、欧米はもっと悪いということらしい。

「金利差も縮小しました」。欧米は日本より金利が高く外貨預金や欧米の債券が人気だった。ところが欧米も景気が悪化し低金利になったので、日本にお金が戻り円高要因になる。

「円高が続くと景気が落ち込み円安に戻るのでは」。章司が食い下がると山崎さんは円高が日本経済に与える影響の試算を取り出した。「1ドルが80円から75円になると実質国内総生産(GDP)を0.2%押し下げる」という。「その程度ですか」。章司は驚いた。

「円高にはプラス面もあるのです」。例えば東京電力は火力発電の燃料費が下がるので、ドルに対し1円の円高で年330億円のコスト減になる見通しだ。

ただ、中小企業が多い東京都大田区で話を聞くと雰囲気は暗かった。「我々は円高になると仕事が減ります」。工場の一角で大田工業連合会会長の舟久保利明さん(68)が説明した。

例えば円高になって安い輸入部品が増えることで、取引先企業を奪われるケースがあるからだ。「若い経営者も育ってますが、大田区で働く人は以前の3分の1に減りました」。帝国データバンクによると1~6月の円高関連倒産は過去最悪のペース。章司は「円高が長引くと技術の海外流出などが心配だ」と思った。

「今後も円高が続くのかな」。章司は、最後に日本大学教授の小巻泰之さんに話を聞いた。「一般に長期的なレートは“購買力平価”で決まるといわれます」と小巻さんは説明する。

これはモノを買う力(購買力)が同じになる水準に為替が決まるという理論。例えばマクドナルドの「ビッグマック」が日本で1個320円、米国で4ドルで売られていたとする。320円と4ドルが同じ価値だと考えれば為替は1ドル=80円。この説では日本でビッグマックが280円に下がれば1ドル=70円になる。「日本は物価が下がるデフレ傾向。円高圧力が働きます」

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