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エコノ探偵団

日の丸小型機 なぜ日本で売れないのか

2012/7/31 日本経済新聞 プラスワン

「日本企業が民間向けの小型ジェット機を開発したそうだね。どれくらい売れるのかな」。ニュースを見た所長のつぶやきに、探偵の深津明日香が反応した。「日本人は国内メーカー好きだし、人気が出そうですね。調べてみましょう」

■国内の需要は中印以下

小型機「ホンダジェット」を開発したのは自動車大手のホンダ。乗客が5人程度で価格は450万ドル(約3億6000万円)。年内にも量産を始めるという。明日香は早速、国内販売の計画を問い合わせた。

返事は意外だった。「まず米国や欧州で販売しますが、日本での予定はありません」(広報)。驚く明日香が尋ねると「市場が小さいからです」との答え。

「どういうこと?」。明日香は航空業界の調査を手掛けるコンサルティング会社、イーソリューションズ(東京都港区)の杉原潤一さん(29)を訪ねた。「ホンダジェットのような小型機は企業が自家用機として使います。ビジネスジェットといいますが、日本では一般的ではありません」

杉原さんが見せてくれた資料によると、世界各国のビジネスジェットの保有機数(2009年時点)は、米国が約1万8千機、欧州諸国がそれぞれ数百機。日本は55機と中国やインドより少ない。「こんなに少ないの。なぜかしら」と疑問をぶつけてみた。

「日本の空港は航空会社の定期路線を中心に運営してきたからです」と杉原さん。海外では大都市近くに小型機専用空港があることも多い。専用のターミナルを備え、乗り降りや出入国手続きがスムーズにできる。日本では受け入れ態勢が整った空港はまだ少ない。

さらに調べようと国土交通省に向かった。「国の厳しい規制も普及しなかった原因の一つ」と航空局の平嶋隆司さん(44)。海外では一般にビジネスジェットは定期路線の航空機より規制が緩い。日本では頻繁な機体検査や割高な保険への加入などが義務付けられ、機体の管理・運用コストが米国の2.5倍にのぼるとの試算もある。年内にも米国並みに規制を緩める方針を打ち出したいという。

事務所に戻って調査資料をまとめていると、所長から声がかかった。「日本は国土が狭いし、新幹線など交通機関も充実している。本当に必要なのかな」

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