ダークナイト・ライジング
心の闇に分け入る大作
知的イメージが好奇心を刺激した『インセプション』のクリストファー・ノーランが、アメリカン・コミックス『バットマン』を新たに監督、脚本も書いて生み出した実写版3部作の最終章。綿密に張られた伏線と大型IMAXカメラのリアルな映像が生きる途方もない大作ぶりに圧倒される。
ダークナイト(闇の騎士=バットマン)が地方検事の死の責任を負って終わった前作から8年。大邸宅に引きこもるブルース・ウェイン、じつはダークナイト(クリスチャン・べール)は、泥棒稼業のセリーナ・カイル=キャット・ウーマン(アン・ハサウェイ)から大打撃を受けた。
その頃、地獄の底のような牢獄(ろうごく)で生まれ、脱走したという伝説を持つ残忍なベイン(トム・ハーディー)がゴッサム・シティを核の脅威で縛って民衆を恐怖に追い込んでいた。そしてウェイン産業を乗っ取り、役員会にはCEOのフォックス(モーガン・フリーマン)とミランダ(マリオン・コティヤール)だけが残った。
市警本部長(ゲイリー・オールドマン)はテロで重傷を負い、若い警官ジョン・ブレイク(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)を直属にして指示を下す。
世の悪化を見かね、苦行を経て再始動したウェインはベインに叩(たた)きのめされてかつての彼がいた牢獄へ。ベインはさらに大衆を扇動して警官たちを襲わせるが、若いブレイクと本部長らは抵抗、ダークナイトを待つが果たして彼は?
伏線につながるエピソードを力強く連打するノーランは、複雑に造型された人物を繰り出して彼らの抱える闇に分け入って行く。そこで語られる善悪に二分化できない人間とその心。ノーラン作品に共通する心の闇にも似た暗い翳(かげ)りがドラマを包む中、終盤で明かされる秘密が「いつかまた帰ってくる」という目配せにも思えるのだが。2時間45分。
★★★★
(映画評論家 渡辺 祥子)
[日本経済新聞夕刊2012年7月27日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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