「フィンランドのくらしとデザイン」展森と湖の国の洗練

2012/7/27

近年、フィンランドのデザインが注目されている。カラフルな布地、モダンですっきりとした食器などにはファンが多い。ところが、その誕生の背景にこの国の深い思想が込められていることまでは知らなかった。

栃木県の宇都宮美術館で開催中の「フィンランドのくらしとデザイン」展は絵画や建築、インテリア、さらには交通網や郵便制度など社会的インフラをも取り上げる。日本より小さな“森と湖の国”が独立後約100年で、デザインや生活に対する考え方をいかに磨き上げたかが分かる。

スウェーデンやロシアの支配下を経て、独立したのは1917年。森林以外の資源に乏しい小国で、この国らしさを模索する芸術家がまず目を向けたのは自然だった。

国民的画家のアクセリ・ガレン=カレラによる「オオヤマネコの巣穴」もそうした1枚。独立前後に描かれた素朴で美しい風景画が多数、日本で紹介されるのは初めて。同国では画家や作曲家、作家らが森のそばに自邸を構え、独自の芸術観を育んだ。

色鮮やかな生地のドレスや男女兼用の洋服などが並ぶ会場

環境を損なわず、快適で豊かな暮らしを求めることは自然な選択だったのだろう。建築家アアルトの木製イスは古くなるとメーカーが回収、修理して再販売する仕組みがある。マリメッコの洋服は年を取り体形が変わっても着続けられる。極め付きは郵便制度。二酸化炭素排出ゼロを目指して配達方法を改善し、手紙を現代にふさわしいコミュニケーションとしてよみがえらせている。

人間の生活や社会のあり方の理想を分かりやすく伝え、目に見える「モノ」にする。デザインとは色や形でなく、哲学なのだと実感させられる。8月26日まで。静岡、長崎、兵庫に巡回。

(文化部 窪田直子)

注目記事