高級財布が5割安 円高メリット、海外ネット通販で満喫
1ドル=80円前後の円高基調が定着してきた。小売店の円高還元セールは下火になる一方で、インターネットのサイトを利用して円高メリットを享受する個人が増えている。欧米のブランド品や高級家具などを為替相場に応じて購入できるのが特徴。自分の目的にあわせて賢く使いこなせれば、ちょっとしたお得感を味わえる。
「お店で買うより、3割ぐらい安かったから、思わず買っちゃった」。6月下旬、都内で働く20代の女性会社員はエニグモ(東京・港)が運営する「バイマ」を通じ、イタリアの高級ブランドの財布を購入した。このサイトは海外約70カ国にいる日本人バイヤーが直接、現地で買いつけた商品に手数料を上乗せして販売している。
日本語サイト開く海外業者も
例えばイタリアの高級ブランドの財布は通常、日本の店頭で購入するより最大5割ほど安くなるという。2012年1月期の取扱高は前期比で53%増えた。「利用するのは20~30代が中心で、高級ブランドの人気が高い」(エニグモ)。今年4月時点の会員数は約90万人になった。
海外のアパレル商品を対象にした同様のサイト「waja(ワジャ)」も若い女性を中心に人気だ。海外のバイヤーが日本でまだ発売していない商品などを仕入れ、販売している。「バイヤーが商品を仕入れる時点で、価格の1割ほどの円高メリットが出ている」。7月の売り上げは前年比約5割増のペースで伸びているという。
海外の通販サイトが日本語サイトを開設する例も出始め、個人が直接アクセスしやすくなってきた。自転車などのアウトドア商品を扱うイギリスの通販サイト「wiggle」はサイト内のほとんどが、日本語で閲覧できる。購入時に通貨を選択できるため、円高の時に円を利用して割安でモノを買える。
円高が定着してきたものの、昨年11月の消費者庁のアンケートでは円高メリットを感じると答えた人は4割のみ。一時、大手スーパーを中心に輸入食品の円高還元セールが増えたが、「来店客の反応は通常のセールとあまりかわらなくなっており、今はかなり減少している」(都内の大手スーパー)という。
小売店や外食店の多くは輸入業者や国内の卸会社を通じて商品を仕入れる手数料が必要。そのコストも考えると一般的な特売と同程度しか値引きできず、消費者は円高メリットを感じづらいという事情があるようだ。
一方で、インターネットサイトの場合は消費者と販売者がほぼ直接つながるため、大幅に低下するコストの分だけ円高メリットを享受しやすくなる。
楽天は楽天市場の会員が米子会社バイ・ドット・コムから個人輸入で商品を購入できるしくみを昨年2月に開始。「アメリカ・ダイレクト」というサイトで米国の日用品やアウトドア商品、家具など約160万点を販売する。毎日、為替相場に連動して価格が変わる。楽天市場の最安値と比べても5割以上安くなる商品も多い。「通常の楽天市場は30~40代の主婦が多いが、アメリカ・ダイレクトは30~50代の男性が多い」という。
海外旅行にも活用
海外旅行の準備でも、インターネットサイトを賢く利用すれば、円高のお得感を味わえる。国内外の15万件以上のホテルの予約を受け付ける「ホテルズドットコム」は、為替相場の変動に連動して宿泊料金が変わるしくみを取り入れている。世界の約85カ国・地域、30言語以上で予約サイトを運営。アジア太平洋では15カ国・地域で、10言語でサイトを開設している。急激な円高になった日に海外のホテルを予約すれば、その分、円高差益を受け取れる。
ユーロ安を狙えるサイトもある。個人輸入のネット競売サイト「セカイモン」は約1億5千万点の欧米製品を取り扱う。米国のアパレル商品や英国のアンティーク調の家具や食器、レコード、楽器などが対象。為替相場で円が高くなれば、その分、安く購入できる。足元では1ユーロ=97~98円台のユーロ安が続いており、今秋からはイタリアやドイツ、フランスからの商品の調達を始める方針だ。
為替相場の市場参加者の間では、当面、1ドル=80円前後、1ユーロ=100円前後の円高基調は続くとの見方が優勢だ。今夏は海外旅行に出かけなくても、ネットを使ってささやかなお得感を享受するのもいいだろう。
(経済部 飛田臨太郎)
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