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薬の授業、試行錯誤 中学で今年度から義務化 薬剤師や企業、支援の動き

2012/7/6 日本経済新聞 夕刊

 医薬品の種類や飲み方、副作用を学ぶ「くすり教育」が今年度から全国の中学校で義務化された。法改正などに伴いコンビニの店頭で手軽に買える薬が増える中、正しく使うための知識や判断力を身につけさせることが狙いだ。新しい学習分野だけに、学校現場では試行錯誤が続いており、専門家らが授業をサポートする動きも広がっている。
薬の正しい使い方について授業を受ける中学生(東京都港区の東洋英和女学院)

 「薬の世界で大人は何歳からですか」。6月中旬、東洋英和女学院中学部(東京・港)のメディア教室。学校薬剤師の佐藤恵子さん(58)が3年3組の生徒37人に質問した。20歳、18歳、15歳――。答えは様々だ。

 正解は15歳。「この中で15歳になった人は?」。佐藤さんは手を上げた数人に「皆さんはもう大人の年齢ですね」と語りかけた。

 同校は3年前から薬の授業に取り組んでいる。1年目はワークシートを使うだけだったが、今は模型や「パワーポイント」を使い、視覚に訴える工夫を凝らす。昨年からは「コップ一杯の水で飲まなければならない理由」を分からせようと実験も取り入れた。

保健体育の一環

 この日の授業でも、本物と同じゼラチン製の空カプセルを各自に配布。「水が少ないと、食道で止まって溶けてしまい、本来溶ける場所の胃や腸まで届かない」と説明し、軽くぬらした指でカプセルに触れさせた。

 下に向けても落ちないほどしっかり指にくっつくことを体験した生徒たち。納得した様子で、「ほんとだ」と声を上げた。

 授業は佐藤さん、保健教諭、養護教諭の3人が連携して進めた。養護教諭の宮崎恵美さん(54)は「救急ばんそうこうのような感覚で薬を使う生徒も多い。間違った使い方をすると、危険だということを理解してほしい」と話す。

 くすり教育は2005年の中央教育審議会で必要性が取り上げられた。文部科学省は08年3月告示の中学校学習指導要領に盛り込み、今年度から完全実施。3年生が保健体育の授業で1~2時間学ぶ。

 高校はこれまでも薬について授業で教えてきたが、来年度の新入生からは、薬の承認制度や販売規制、副作用の種類など、よりレベルの高い内容となる。

 背景にあるのは、規制緩和や法改正によってコンビニなどの店頭に並ぶ薬が増えていることだ。文科省学校健康教育課は「薬と接する機会が増え、正しい知識を身につける必要性が増した」と説明する。

 同課によると、薬を勝手に使ってはいけないことを理解させるのが授業のポイント。「自分で選ぶというより、保護者や医者と相談した上で正しく飲めるようになることを目指す」(同課)という。

 では、どうすれば子供たちにうまく伝えられるのか――。学校現場は模索している。

 東京・港区立高松中は義務化に先立ち、昨年度の授業で取り上げた。目薬や胃腸薬など9種類の空箱を製薬会社から提供してもらい、生徒に配布。生徒たちは箱に書かれた情報をもとに「胃が痛い」「ひどい鼻水と鼻づまり」などの症状に合わせてどの薬を選んで使ったら良いのかを考えた。「目薬の正しい使い方を初めて知った」という生徒もいたという。

 授業は好評だったが、保健体育の教諭、石塚陽子さん(57)は「まだ試行錯誤の段階。実験などを取り入れる学校もあり、今年度はどういう授業とするか、考えたい」として、情報収集を進めている。

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