ミュージカル「サンセット大通り」心の動きを濃密に描く

「サンセットブールバード ねじれたこの道……」。思わず口ずさみたくなる曲を題名にしたミュージカル「サンセット大通り」が、日本で初演されている。アンドリュー・ロイド=ウェバーのヒット作の中で今まで未上演だった。無声映画の大女優ノーマを安蘭けいが演じ、鈴木裕美が演出、登場人物の心の動きを重視した濃密な人間関係の創出に焦点を当てている。

貧乏脚本家のジョー(田代万里生)は借金取りに追いかけられ、サンセット大通りの荒れ果てた屋敷に迷い込む。住人は世間から忘れられた大スター、ノーマ(安蘭)と執事のマックス(鈴木綜馬)。映画界への復帰を夢見るノーマはジョーが脚本家と知り、自分が書いた「サロメ」の脚本の手直しを依頼、ジョーはお金のためにと引き受け、屋敷に暮らすことになる。

初期のロンドン公演を見た時は、豪華で大掛かりな舞台セットだったが、今回はシンプル。華々しさが減殺された半面、俳優の演技に目が集中する。演出の鈴木のもくろみ通り、内面の心理描写がていねいに表現されている。

原作は1950年の米国映画。ハリウッドでの成功が野心的な人々を引きつける。あらためて見て、アメリカンドリームの光と影、男女の複雑な愛憎関係が情感たっぷりに描かれている傑作だ。

魅力的なナンバーを安蘭がパワフルに歌い、田代も甘いマスクのジョーを造形。脚本家志望でジョーと恋に落ちるベティを彩吹真央が好演。

繊細でプライドの高いノーマが最後に破滅していくさまは、テネシー・ウィリアムズの戯曲「欲望という名の電車」の主人公、ブランチに似ている。せっかくの名作ミュージカルの上演が短期間なのは惜しい。7月1日まで、赤坂ACTシアター。

(編集委員 河野孝)



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