ヘルスUP

健康づくり

よくかんで肥満を予防、脳の活性化も

2012/6/26 日本経済新聞 朝刊

かむことは健康によいとされる。最近の研究で、ストレス解消や肥満の防止、記憶力の向上などに効果があるとわかってきた。軟らかい食品が増えてかむ回数は減っているが、食材の選び方や調理法などで対処できる。ガムを使う手もある。かむという行為を見直してみてはどうだろう。

苦しいときやつらいとき、人は歯を食いしばる。かむことはストレス解消に効果があるようだ。神奈川歯科大学の小野塚実名誉教授が手がけた興味深い実験がある。

■ストレス解消

ネズミを毎日30分縛ってストレスを高め、発がん性物質を与えた。縛られているときに木をかじったグループはがんが発生する確率が何もしないグループの3分の1に減った。ストレスが高いと免疫機能が低下し、がんになりやすくなるとされる。かむことでストレスが解消されたためではないかという。

こんな実験もある。非常ベルなど不快な騒音を人に聞かせたとき、ガムをかむと脳が感じるストレスが減った。小野塚名誉教授も実験に参加し、「自然と我慢できるようになった」という。これらの実験から「かんでストレスを発散すれば、病気を予防できるのではないか」と期待する。

健康への好影響は他にもある。例えば肥満予防だ。よくかむと、脳の満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防げる。おにぎりを朝ご飯に食べてもらったとき、一口(約15グラム)につき50回以上かんだグループは、普通の食べ方をしたグループよりも摂取カロリーが平均して約280キロカロリー減った。おにぎり1個分以上、食べなくても満腹になったわけだ。

「かむという行為は脳をよく使い、働かせる」と新潟大学の山村健介教授は主張する。口に入れた食べ物の形や味などの情報が刺激として脳に伝わる。脳はあごや舌などの筋肉と連携して食べ物を砕くように指令を出す。

ガムを2分間かんだ後に記憶力テストをすると、高齢者ほど成績が良くなった。脳を調べると、記憶にかかわる海馬などの働きが高まっていた。ネズミの歯を抜いたり削ったりすると、迷路で出口にたどりつくまで時間がかかるようになったとの実験もある。

しかし、現代人のかむ回数は確実に減っている。卑弥呼(弥生時代)や源頼朝(鎌倉時代)、徳川家康(江戸初期)などの時代の食事を復元して比べると、弥生時代の人は1食に50分以上もかけ約4000回かんでいた。玄米やカワハギの干物などかみ応えのある食品が中心だったからだ。それが現代はたった11分間で終わり、かむ回数も620回にまで減っていた。

ヘルスUP 新着記事

ALL CHANNEL