まずは普通に家で氷を作ってみる。冷凍庫の小さな製氷コーナーに水道水を入れる。冷凍庫内の温度はマイナス20度。寝る前にセットして約8時間後、出来上がった氷はバラツキはあるものの、全体の4分の1程度は白く濁った部分が残ってしまう。
どうして濁りができるのだろうか。氷に関する本を調べてみると、水に含まれる空気が気泡になった状態で固まり、白く濁って見えるらしい。さらに水に含まれる不純物も濁りになるという。水道水の場合は塩素、ミネラルウオーターならカルシウムなどのミネラルが不純物にあたる。
不純物が原因なら、それを取り除いてから凍らせてみてはどうだろう。水をグツグツと沸騰させれば、不純物も減るのではないか。さらに塩素などが多い水道水ではなく、ミネラルの含有量が少ない軟水タイプのミネラルウオーターを使い、試してみた。
普通の水道水、軟水のミネラルウオーター、沸騰させた水道水と3種類を製氷皿に分けて入れ、マイナス20度で8時間凍らせた。
出来上がった氷を比べるとはっきりと違いが出た。水道水に比べ、沸騰させた水と軟水のミネラルウオーターは、濁った部分が大幅に少ない。最も少ない氷は、全体の8分の1程度しかなかった。
不純物を取り除けば、透明な氷に近づくのは間違いなさそうだ。ただ濁りは減ったとはいえ、店で売っている氷のように完全に透明ではない。2回、3回と繰り返しても結果は変わらなかった。
使う水を工夫する以外に何かコツがあるのだろうか。本職の知恵を借りようと、老舗の製氷会社である中央冷凍産業(東京都千代田区)を訪ねた。相談役の伊藤敏郎さんによると「冷えすぎない温度で、ゆっくり凍らせることがポイントです。ただ、家庭では難しいですよ」。
製氷会社は水を専用のろ過装置に通した後に、マイナス10度でゆっくり凍らせている。ゆっくり凍ることで不純物が空気中に徐々に放出され、透明な氷になるという。自然界でも洞窟などで水滴がしたたり落ち、長い年月をかけて少しずつ凍ると、透明な氷ができる。それと同じ原理だ。
家庭で作る場合に問題となるのは温度設定だ。一般的な冷凍庫はマイナス20度程度と、かなり低い温度に設定されている。最新の冷凍庫は細かい温度調整機能を備えているタイプもあるが、8年前に買った家の冷凍庫にはなかった。