完全に透明な氷、家庭でも作れた 氷屋の製法を応用

2012/6/22

暮らしの知恵

夏になると、冷たい氷に心をひかれる。涼しげで、飲み物に氷が溶ける音色も心地よい。お店で売っている氷は透明できれいだが、家で毎日使うと結構な出費になる。家計のためにも、透明な氷を家庭の冷凍庫で作ることができないか。ウイスキーや焼酎をロックで飲むのが大好きな記者(34)が、美しい氷作りに挑んだ。

まずは普通に家で氷を作ってみる。冷凍庫の小さな製氷コーナーに水道水を入れる。冷凍庫内の温度はマイナス20度。寝る前にセットして約8時間後、出来上がった氷はバラツキはあるものの、全体の4分の1程度は白く濁った部分が残ってしまう。

軟水ミネラルは濁り部分少なく

どうして濁りができるのだろうか。氷に関する本を調べてみると、水に含まれる空気が気泡になった状態で固まり、白く濁って見えるらしい。さらに水に含まれる不純物も濁りになるという。水道水の場合は塩素、ミネラルウオーターならカルシウムなどのミネラルが不純物にあたる。

不純物が原因なら、それを取り除いてから凍らせてみてはどうだろう。水をグツグツと沸騰させれば、不純物も減るのではないか。さらに塩素などが多い水道水ではなく、ミネラルの含有量が少ない軟水タイプのミネラルウオーターを使い、試してみた。

普通の水道水、軟水のミネラルウオーター、沸騰させた水道水と3種類を製氷皿に分けて入れ、マイナス20度で8時間凍らせた。

出来上がった氷を比べるとはっきりと違いが出た。水道水に比べ、沸騰させた水と軟水のミネラルウオーターは、濁った部分が大幅に少ない。最も少ない氷は、全体の8分の1程度しかなかった。

不純物を取り除けば、透明な氷に近づくのは間違いなさそうだ。ただ濁りは減ったとはいえ、店で売っている氷のように完全に透明ではない。2回、3回と繰り返しても結果は変わらなかった。

使う水を工夫する以外に何かコツがあるのだろうか。本職の知恵を借りようと、老舗の製氷会社である中央冷凍産業(東京都千代田区)を訪ねた。相談役の伊藤敏郎さんによると「冷えすぎない温度で、ゆっくり凍らせることがポイントです。ただ、家庭では難しいですよ」。

製氷会社は水を専用のろ過装置に通した後に、マイナス10度でゆっくり凍らせている。ゆっくり凍ることで不純物が空気中に徐々に放出され、透明な氷になるという。自然界でも洞窟などで水滴がしたたり落ち、長い年月をかけて少しずつ凍ると、透明な氷ができる。それと同じ原理だ。

家庭で作る場合に問題となるのは温度設定だ。一般的な冷凍庫はマイナス20度程度と、かなり低い温度に設定されている。最新の冷凍庫は細かい温度調整機能を備えているタイプもあるが、8年前に買った家の冷凍庫にはなかった。

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