愛と誠
笑いある熱血青春ドラマ
1970年代にヒットした、梶原一騎原作、ながやす巧画のまんが「愛と誠」を、「ヤッターマン」(09年)「十三人の刺客」(10年)の三池崇史監督が映画化。
まんが連載中の74年、75年に映画化されたときのようなストレートな熱血青春ドラマではなく、熱血ではあるが、フザケた笑いの要素にあふれた、原作よりもよほど「まんが」的な作風になっているのが三池監督らしい。ミュージカルじたてになっているのにも、おどろかされる。
幼時の愛と誠の出会いがアニメでえがかれ(ここは原作に実に忠実)たあと、高校生になった太賀誠(妻夫木聡)が72年の新宿地下街に登場。不良にかこまれて、さあケンカがはじまる、という瞬間、妻夫木は、やめろと言われてもッ……と西城秀樹の「激しい恋」をうたい出し(そういえば初代の誠役者は西城だった)、群舞と乱闘アクションが同時進行する。ここは快調だ。
その後も、おもな登場人物ひとりが1曲ずつ、ミュージカル・ナンバーを演じる。曲の大半は70年代はじめの流行歌で、役者本人がうたっている。
突拍子もなく、たのしい趣向だが、できばえにムラがある。両手を大きくひろげてポーズをとればミュージカル、みたいな安易なのはやめてほしかった。稚拙さとパロディーはちがう。
尾崎紀世彦の「また逢(あ)う日まで」をうたった安藤サクラの「ミュージカル」っぽい振りを廃した身体表現に、もっともミュージカルらしい感動がある。原作では小さな役のガムコが、影の番長・高原由紀(大野いと)をしのぐ大役になっているのもうなずける。
武井咲の早乙女愛は、清純・無垢(むく)な古典的ヒロインのパロディーとして、徹底的にトンチンカンな少女にえがかれているが、それでも愛らしいからスゴイ。鉄壁の美少女ぶりだ。2時間14分。
★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2012年6月15日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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