クルマ、家庭…水素は世の中を変える?

町単位で実験

「ここが福岡県などが運営する水素タウンです」。水素供給・利用技術研究組合の粟津幸雄さん(54)が出迎えた。新日本製鉄の八幡製鉄所の隣にある1.2平方キロメートル、昼間人口6000人の町では、新日鉄が製鉄に使うコークスを作るときに出る水素をガス管で町全体に供給している。

「このショッピングセンターは水素を活用して運営しているんです」。燃料電池で発電し、一緒にできるお湯はペットショップが利用。倉庫のフォークリフトも燃料電池で動く。集合住宅の横にはカセットボンベに詰めた水素で動く電動アシスト自転車もあった。乗ってみると意外にパワフルで坂道もすいすい登る。

粟津さんは「水素を都市ガスとして使う技術を開発しているんです」と説明した。明日香は「水素はエネルギー利用を根本から変える可能性があるのね。ガス会社と電力会社がもっと競争すれば、消費者にも料金などのメリットは大きそう」とつぶやいた。

明日香は九州大学に行き、この分野の専門家である村上敬宜・産業技術総合研究所水素材料先端科学研究センター長に聞いた。「将来、枯渇が懸念される石油の価格が上がるでしょう。資源の少ない日本は水素利用を進め、使うエネルギーを多様化すべきです」と強調した。さらに「電気自動車は電池とモーターがあれば学生でも作れますが、燃料電池車は技術力と経営体力のある自動車メーカーしか作れません。日本が国際競争力を維持するためにも、産業育成を急ぐべきです」と付け加えた。

明日香が「水素発電の技術では日本がリードしているんですね」とうなずくと、村上さんは「技術は進んでいますが、規制の見直しが遅れています」とくぎを刺した。部品に使うことが認められている材料が少なく、開発で追い上げる欧米各国などに比べ不利だという。「企業と国がうまく連携しないと、技術はあるのに外国に負けかねないわ」。明日香は心配になった。

事務所で報告すると、所長が「うちも燃料電池車にするか」。円子がため息をついた。「無理よ。この軽そうな財布を見て。水素が入ってるみたいでしょ」

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