貸会議室、なぜ増える? 空き室活用、手軽に開業エコノ探偵団

採用活動の場

例えば目立つのが、企業の採用試験や就職説明会。近年は年間を通じて利用する企業も増えているという。さらに一般の消費者に製品を紹介するセミナーや株主総会。不祥事を起こした企業の謝罪会見や、倒産した企業の債権者集会などは、縁起が悪いなどの理由でホテルなどの宴会場では開けないこともあるという。さらに最近は残業などが減ったせいか、個人が趣味のサークル活動に使う場面も目立ってきたという。

「企業や個人が外部施設を共有しているわけですね」。章司は再びエッサムの八鍬会長にぶつけてみた。「経費削減で大きな会議室を持たない会社が増えているのです。そこにニーズが生まれています」。企業はリストラ策としてオフィスの拠点や規模を縮小することが増えてきた。

章司はオフィスの設計や用具販売などを手掛ける内田洋行の矢野直哉さん(49)を訪ねた。「企業は多くの社員が集まる施設や応接室を削る傾向にありますね。新しいビルでは入館セキュリティーが厳しく、社外の人が入りにくくなったことも、外部施設の利用を後押ししているようです」

働き方も変化

「企業は前よりも会議をしなくなったのかな」。「そうではありません」と矢野さん。会議室の間仕切りを無くしたり、少人数で気軽に打ち合わせができるスペースを設けたりといった新設計を採用する会社はむしろ増えているという。

「どういうことだろう」。オフィスの変遷に詳しいニューオフィス推進協会(東京都中央区)の坂巻裕一さん(53)にも聞いた。「今の職場は昔と違い、社内の知恵を集めて創造的なアイデアや企画を出すことを重視しているんです」。「そうか企業は取引先との商談などは外の施設を使い、職場の重要な打ち合わせを社内でと使い分けているんだな」と章司は理解した。

「社員の働き方も変わってきていますよ」。オフィス事情に詳しい野村総合研究所の田口孝紀さん(35)が指摘してくれた。「IT(情報技術)が発達し、日々の上司への報告や同僚との情報交換を密にできるようになりました」。持ち運びやすい高性能パソコンなどが普及し、自宅や外出先にいても社内と同じように働けるようになってきた。

実際に「利用客が増えてきましたよ」と、個人向けレンタルオフィスを運営する日本リージャス(東京都港区)会長の呉偉(くれ・たかし)さん(61)が教えてくれた。現在、会員約2万人を抱え、この1年で約5割も増えた。章司は「企業は豪華な施設を備えたオフィスを手控えていて、社員の活動の場はどんどんオフィスの外にも広がっているんだ」と納得した。

事務所で報告を終えた章司は「我々も在宅勤務にして、空き部屋を会議室として貸してはどうですか」と提案。すると所長が「君たちはサボって探偵業では稼げなくなるんじゃないか」