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自動販売機、物を売るだけじゃない 客層を把握、新商品に反映 エコノ探偵団

2012/5/20 日本経済新聞 プラスワン

「変わった自動販売機が駅にあったの。おすすめの缶飲料を紹介され、買ったら英語で『ありがとう』と表示されたわ」。近所の主婦が事務所に寄った。「物を売るだけではない何かが自販機に起きている」。探偵、深津明日香が調べ始めた。

JR東日本ウォータービジネスの次世代自動販売機のディスプレーは目をひく(JR恵比寿駅構内)

明日香は証言を頼りに東京都渋谷区のJR恵比寿駅を訪ねた。「これね」。目当ての飲料自販機はすぐに見つかった。前面の電光掲示板に30本以上の缶やペットボトルの飲料の画像が映る。前に立つといくつかの商品の映像に「おすすめ」の文字が浮かび上がった。

■ITで顔識別

「私の好きな紅茶も推薦している。なぜ心の中がわかるのかしら」。明日香に、本社が近いJR東日本ウォータービジネスの社長、田村修さん(44)が話しかけた。「顔をセンサーで読み取り、性別やおよその年齢を推測します。過去の販売データに照らし、売れそうな商品を選ぶのです」

同社はJR東日本の子会社で、この「次世代自販機」を開発した。次世代機は客の属性とともに、買った商品、時間帯などの情報を中央サーバーに無線で送信する。これが独自の飲料開発や、おすすめマークをつける根拠になる。

2010年夏に都内で稼働を始め、約340台に増えた。田村さんの会社はほかに約1万台の飲料自販機を管理。このうち電子マネーが使える約4千台でも客の一部の性別や年齢層を割り出し、データに加える。

データを分析、果汁の有力ブランドが女性客の人気を集めていることがわかった。果汁飲料は通常、午後に売り上げが伸びるが、同ブランドは朝も売れる。朝も午後も販売を増やし、客の女性比率を高める戦略商品として夏ミカン飲料を開発、今年4月に発売した。

「販売情報を商品開発に生かすとはコンビニエンスストアのようね」。明日香は日本コカ・コーラに向かった。系列自販機の1割にあたる約10万台にNTTドコモなどの通信部品を装着し、携帯電話回線でデータをやり取りしていると聞いたからだ。大谷知也さん(44)が明かした。「販売促進にデータを使います。どの商品がいつ、どこで、どれだけ売れたのかがわかれば、詳細な方針を立てやすくなるのです」

一つひとつの自販機内の在庫を細かく把握、商品補充の効率も高められる。明日香はメモした。「飲料用を中心に自販機のIT(情報技術)化が進む。でも、なぜいまなのかしら?」

飲料総研(東京都新宿区)の宮下和浩さん(47)が答えた。「自販機を通じた飲料販売の比率が下がり、てこ入れに乗り出したのです」。同社が清涼飲料の販売量をチャネル別に調べると、自販機は1990年代半ばに全体のほぼ半分。その後は安売りのスーパーが伸び、10年には自販機を抜いた。11年はスーパーが36%、自販機は33%だった。

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