高血圧は運動不足や塩分の多い食事など生活習慣が積み重なって発症する例が多く、主に薬で治療する。ただ、中にはホルモンの分泌異常などで起こるタイプの高血圧もある。手術など適切な治療で改善するので、詳しい医師を訪れ、検査を受けることが重要だ。
手術で血圧が正常値に
京都市在住の40代のAさんは血圧を下げる薬を8年間、服用していた。親もひどい高血圧だったため、自分にも遺伝したと納得して飲み続けたが、あまり効果がなかった。そこで、思い切って受診する病院を変え、改めて血液検査を受けたところ、「原発性アルドステロン症の可能性がある」といわれた。専門医を紹介され、この病気だと確定。手術を受けると、血圧が正常値にまで戻り、薬を毎日服用する生活から解放された。
高血圧は遺伝的な要因や生活習慣などで起こるのが一般的。ただ、慢性の腎臓病やホルモンの分泌異常なども原因になる。
高血圧の治療は通常、カルシウム拮抗(きっこう)薬、アンジオテンシン2受容体拮抗薬、利尿剤などを使う。医師から処方された3種類の薬剤を十分な量服用しても血圧が下がらない「治療抵抗性」と呼ばれるタイプの患者は国内に約100万人いると推定される。「原発性アルドステロン症」もその中の一つだ。
アルドステロンは血圧のバランスを保つホルモン。腎臓の上にある臓器「副腎」に小さな腫瘍ができると、このホルモンが過剰に作られてしまい、バランスが崩れて高血圧を招く。血圧を下げる薬が効きにくい例もある。半面、手術でこの腫瘍を取り除けば異常なホルモン分泌がなくなり、血圧も正常値に戻る。
国立病院機構京都医療センターの成瀬光栄・内分泌代謝高血圧研究部長は「薬が効かないタイプの患者の5人に1人が原発性アルドステロン症という報告もある」と指摘する。同機構に属する各地の病院が協力し調べた結果だ。
この病気の患者のうち、手術の対象になるのは片方の副腎に腫瘍があるケース。腹部に小さな穴を開ける腹腔(ふくくう)鏡手術などで腫瘍を摘出した翌日に早くも血圧が正常になる患者もいる。ただ、両方の副腎に腫瘍がある患者は、手術ではなくアルドステロンの分泌を抑える薬やカルシウム拮抗薬などを組み合わせて治療をする。