SNS・ツイッターで読書会、ネットが広げる本の楽しみ
インターネットやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を通して、読書の感想を共有することで、より深く本を楽しむ――。「ソーシャルリーディング」と呼ばれるサービスが続々と登場している。技術の発展が読書という慣れ親しまれた娯楽に新たな魅力を生んでいる。
レビュー4万5000件
「読む人によって同じ本の感想が全く違うことが分かって面白い」と話すのは、東京・渋谷に住む公務員の渡辺史さん(29)。昨年末から、インターネット上の書評共有サイト「ブクレコ」を利用している。
ブクレコは自分が読んだ本のレビューを共有するサービス。昨年12月に開設し、会員数は現在約5万人、本のレビューは約4万5000件登録されている。最大の特徴は、既存の交流サイト(SNS)のアカウントでログインすること。フェイスブックやミクシィ、ツイッターで知り合いの人と、ブクレコ上でもすぐにつながることができる。
渡辺さんはこれまでもSNSのミクシィなどで本の感想を書いていたが、「本に特化して交流できるのが便利」と話す。同サービスを運営するブクレコ(東京・中央)によると、フェイスブックからのログインが約8割。ビジネス書やノンフィクションのレビューが多いのが特徴だという。
読書の感想をネット上で共有するサービスはほかにもある。参加者数や本の内容の傾向も様々だ。その中でも参加者が特に多いのが、ペーパーボーイ&コー(東京・渋谷)が2004年に始めた「ブクログ」だ。利用者は50万人を超える。自分の本棚をネット上につくり、感想を共有するサイトで、女性の割合が56%と多い。
ソーシャルリーディング専用のサービスではなく、既存のサービスを利用した草の根の取り組みもある。
漱石から話題本まで
ミニブログのツイッターを利用して月に1度開かれているのが「twitter(ツイッター)読書会」だ。課題となる本や読書に関するテーマを設定し、参加者が自由に感想などをつぶやく。「ハッシュタグ」と呼ばれる目印を付けることで、ツイッター上でお互いに感想を確認できる仕組みだ。
主催するのは「ゆりいか」というアカウント名でツイッターに登録しているライターの堀田隆大さん(22)。09年の12月から始め、これまでに番外編も含めて35回以上開いた。課題本は夏目漱石の「こころ」やJ・D・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」などの古典から、舞城王太郎氏の「好き好き大好き超愛してる。」といった近年話題を呼んだ本まで幅広い。多いときには1万を超えるツイートが寄せられる。
昨年12月からは雑誌「ダ・ヴィンチ」のサイト「ダ・ヴィンチ電子ナビ」と共催しており、同サイトからも投稿できるようになった。テーマも特定の本の感想だけでなく、「思わずジャケ買いした1冊」といった、本の選び方などに広がっている。
さらに読書会で知り合った人同士で、実際に集まってリアルの場で読書会を開くなど、活動の場は広がり始めている。堀田さんは「読書にインターネットを組み合わせることで、本の楽しみ方が大きく変わる。コミュニケーションのツールとして、本をもう一度捉え直すきっかけになったらうれしい」と話している。(消費産業部 川本太郎)
[日本経済新聞夕刊2012年5月10日付]
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