ネットで集客

「現場の声も聞こう」。行政書士の露木幸彦さん(31)の事務所を訪ねた。露木さんは離婚相談サイトを運営し、男女問題のエッセーなどの読者は2万人。ファンが相談してくるといい、「サイトを開いてすぐ、仕事は軌道に乗りました」。交流サイト「フェイスブック」などを活用し、同業者や他の士業との連携もしやすくなったという。

「ネットが普及し、コネや人脈がなくても仕事ができるようになったのか」。章司は納得した。さらに地域金融コンサルタントの坂本忠弘さん(45)にも助言を求めた。「長引く景気低迷で、中小企業経営者が税理士や行政書士などに相談する機会が増えています」とヒントをくれた。

「中小企業か。どんなニーズか探ろう」。章司は新しい試みを始めたと聞き、行政書士の塩田英治さん(47)の事務所に行った。「最近、中小企業の借り入れや取引拡大を助ける仕事を始めました」。塩田さんは「知的資産経営報告書」という冊子を取り出した。「知的資産とは目に見えない経営の強みのことです」

担保はなくても、経営者が長年築いてきた人脈や独自のノウハウなどが豊富な中小企業は多い。だが、目に見えないので金融機関や取引先には十分評価されてこなかった。「それを標準化された報告書にまとめます。従来のように役所に提出する書類を作るだけなら仕事は減っていきますが、新分野も生まれています」

「競争が激しくなる中で、士業は司法サービスから個人や企業が気軽に相談できるコンサルタントに脱皮しつつあるのか。そこに新しい仕事も生まれている構図だな。でも、士業が増えて問題はないのかな」

章司は東京財団の加藤創太上席研究員(45)に聞いた。「終身雇用が崩壊したと言われますが、他国と比べると日本人の人材流動化は遅れています。むしろ士業の拡大を促し、組織に埋もれている人材の活用を図った方がいいでしょう」

「でも公務員が試験免除で士業になっているのはさすがに不公平では」。章司の言葉に加藤さんは、「公務員に免除するなら、民間で専門的な経験を積んだ人にも認めるべきでしょうね」と指摘した。

「過当競争がサービスの質の低下につながらないよう監視する必要もあるな」。章司は報告書を書きながら、「エコノ探偵士の資格ができればもっといい事務所に転職できるのに」とつぶやいた。その言葉を聞きつけた所長がくぎを刺した。「試験に落ちたら、同じサムライでも浪人だぞ」

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