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行政書士など「士業」、なぜ増加? 天下り減り元公務員も流入 エコノ探偵団

2012/4/29 日本経済新聞 プラスワン

「会社を辞めてサムライになりたいの」。探偵の松田章司は久々に飲んだ元同級生の顔を思わず見つめた。「あ、行政書士とか“士(サムライ)業”のこと。でも競争が激化してるらしいの」。「よし、背景を調べるよ」。章司は胸をたたいた。

調べると行政書士は約4万2千人と、5年前と比べ8%増えていた。税理士も2010年度末が7万2千人で5年間で4%増。他も大半が伸びた。「弁護士や公認会計士は国が増やしたと聞くけど他も増えたのか。就職に有利だからかな」

■司法から転向

資格学校の東京リーガルマインド(東京都中野区)を訪ねると予想はあっさり覆された。「士業の資格を取る学生さんは減りました」。反町雄彦取締役(35)は、「就職活動で忙しくなった影響では」と推測する。最近、人気が高いのは公務員試験の講座だという。

「じゃあ、どんな人が資格を取っているんだ?」。章司は日本行政書士会連合会に向かった。

「司法試験に落ちた人が入ってきています」。専務理事の田後隆二さん(49)が説明した。06年度から始まった新試験では、法科大学院を出た後、5年、3回以内に合格しないと弁護士になれない。国は当初、年間3千人を合格させる計画だったが約2千人に絞った。不合格者が法律家の夢をあきらめきれず、行政書士などに流れたという。

資格を取る学生は減っている一方で…(東京リーガルマインド新宿エルタワー本校)

次に訪ねた日本税理士会連合会の担当者は別の理由を挙げた。「我々が、公認会計士の資格で税理士登録ができる現行制度の廃止を求めているのが原因かもしれません」。見直しの可能性があるので「駆け込み」で資格を取る会計士が増えたようだという。

「どうやら制度変更がカギだな。最近、他にも変更があったような気が」。章司が考えていると、持っていた新聞の見出しが目に入った。「“公務員削減。天下り規制も強化”か。もしかして……」。調べると、税理士、司法書士、行政書士、弁理士などで、役所に一定期間勤めると試験が一部もしくは全部免除される制度があった。

■試験の免除も

国税庁に問い合わせると、税理士の試験免除を受けた人は07年度の1142人に比べ10年度は60%以上増えていた。「団塊世代の退職が始まり、天下り批判も高まった時期と符合する。退職後、資格を取って開業したんだな」

事務所で得意げに報告すると、所長が「士業が増える背景は分かった。だが、それに見合う仕事はあるのかね?」とにらんだ。章司は「すぐ調べます」と、慌てて飛び出した。

事情に詳しい教材開発のクイック教育システムズ(東京都千代田区)を訪ね、自身も635の資格を持つ中村一樹社長(39)に話を聞いた。「国の制度改正もあり、士業の仕事は拡大しています」。例えば昨年、特定非営利活動法人が一定の条件を満たすと、寄付控除の対象になる制度改正があった。寄付をする側、受け取る側とも手続きが必要で、公認会計士や税理士などの仕事が生まれる。

02年には、弁護士しかできなかった訴訟活動を、簡易裁判所に限り司法書士にも認めた。最近では10年に完全施行された改正貸金業法を巡り、弁護士や司法書士に過払い金払い戻しなどの“特需”があった。

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