2~3分に1度、視線をずらす

一方、「利用時の距離が問題」と話すのは、目の疲れに詳しい梶田眼科(東京都港区)の梶田雅義院長。「デスクトップパソコンは目と画面の距離が約70センチメートル、ノートでも約50センチメートルといわれるが、手で持つスマホはそれよりずっと近くなる」。画面を触って操作するスマホは、本体を支える手と操作する手が必要とで、両手を使うことになる。片手で操作する携帯電話よりも、目の近くで見る場合が多い。

「近くになればなるほどピントは合わせづらい。目の内側にある毛様体筋に負担がかかる」(梶田さん)。さらに近くを見ようとすると、両目を寄り目のように移動させるため、目の外側の筋肉にも負担がかかる。この目の内側と外側の筋肉への負担が、目の疲れにつながるという。

「軽減には視線を移動させるのが重要」と梶田さん。一瞬でも目線を遠くへ動かせば、目の筋肉のストレッチになり、負担を軽減できるという。「パソコンは10分に一度、画面から目を離すようにとされるが、目と画面の距離が近いスマホは、2~3分に一度、視線をずらしたほうがいい」と助言する。

◇            ◇

二重に見える症状も

「単なる疲れ目」と軽視するのは禁物だ。近くの画面を見るために両目を寄せてピントを合わせる動きを「輻湊(ふくそう)」と呼ぶ。この状態は目への負担が大きく、「その負担を軽減するために、次第に一方の目を外し、片目で見るようになる」と梶田さん。「この状態が長く続くと、遠くを見るときも左右の視線がずれたままになり、斜位や斜視を起こす原因にもなる」。その結果、ものが二重に見える症状が発生することもあるそうだ。

対策の一つが「視線がずれたままでも両眼で見られるように調整できるプリズムレンズを使用したメガネを利用する」(梶田さん)こと。実際にプリズムレンズが必要な患者は増えている。梶田さんによると「10年前は年に3~4人しか処方しなかったのに、今は1日4~5人にプリズムレンズを処方することがある」。こうした状況になる前に、早めに対処することが大切だ。

(編集委員 大谷真幸)

[日経プラスワン2012年4月28日付]

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