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エコノ探偵団

眠る預金・ポイント 寿命は? 管理コスト負担 消費促す エコノ探偵団

2012/4/22 日本経済新聞 プラスワン

「長い間使われていない銀行預金を、政府が使おうとしているそうよ」。友人の言葉に探偵、深津明日香が反応した。「自分のお金じゃなくなるのかしら。そういえば昔の商品券やポイントカードが今も使えるのか気になるわ。調べてみよう」

明日香はまず、全国銀行協会(東京都千代田区)に向かった。「預けたお金は放っておくと無くなるんですか」と担当者に尋ねると、「いいえ。何十年前の預金でも通帳と印鑑などで確認できれば引き出せますよ」と答えが返ってきた。

■国が活用検討

日本の銀行では、10年間出し入れがなく、本人と連絡が取れない預金を休眠預金として扱う。銀行の会計上は収益として計算するが、実際には預金が無くなるわけではない。銀行が合併した場合でも、利用の履歴をさかのぼって払い戻しを請求できるのだという。

金融庁によると、2011年3月期に発生した休眠預金は882億円。一方、払い戻された休眠預金は341億円。政府はこの休眠預金を国で管理し、被災地企業の復興資金や、新産業創出などに使う案を検討しているのだという。

「もし国が休眠預金を活用すると、どうなるの」。元金融庁長官でPwC総合研究所理事長の五味広文さん(62)に聞くと「すでに英国や韓国などで事例がありますが、預金者から請求があれば払い戻すのが原則です。日本もそういう仕組みになるのでは」と教えてくれた。

「それなら問題はないんじゃないかしら」と明日香がつぶやくと、「ところが課題もあるんですよ」と五味さんは続けた。「口座の管理はタダではできません。休眠預金は膨大な数ですから、新たな仕組みをつくった場合にコストは百億円単位に膨らむと思います」。それは税金でまかなうのか、それとも各銀行が共同負担するのか、見通しが立っていない。このため銀行業界は政府が休眠預金を活用するという案には慎重な姿勢をとっている。

ふに落ちない様子の明日香に、五味さんが説明してくれた。「銀行は預金者の銀行口座を維持するために、取引データを記録するシステムや必要書類を作成・保存するなど様々な負担をしてます。その分のコストは、預金を運用してもうけを出すことでまかなっているんですよ」。

だが、入出金が無く残高も少ない休眠預金は、利益を生まずにコストだけがかかってしまう。この問題を解決するため、海外の銀行では維持管理手数料という形で、預金者に負担を求めるケースが多い。米シティグループの場合、休眠状態の口座には月額10ドル(約810円)を徴収。日本のシティバンク銀行では、月額2100円がかかる。

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