スマホ、声で楽々操作 メール入力や予定管理も
画面を指で操作するスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)で、文章入力に苦労したり、操作を煩わしく感じたりする人は少なくないだろう。そんなニーズに応えて、声で話しかけた内容をスマホが瞬時に理解し、電話やメール入力、スケジュール管理など、使いたい機能を即座に呼び出せるサービスが相次いで登場している。声で使えるアプリも増えており、スマホの活用の場が広がりつつある。
話しかけるだけで瞬時に実行
「1時から会議と覚えておいて」
「山田さんにあと10分で到着するとメッセージを送って」
スマホに向かって話しかけるだけで、スケジュールを登録したり、メールを送信したり。声で指示された動作を瞬時に実行してくれるのがスマートフォンの「音声アシスタント」機能だ。
米アップルは、音声を通じてiPhone(アイフォーン)4Sの操作や入力ができる「Siri(シリ)」の日本語版の提供を3月から開始した。端末のOSを最新版にバージョンアップすれば使えるようになる。
使い方は簡単。スマホに向かって動作を指示するか、知りたいことを質問すれば、使いたい機能やアプリを呼び出したり、回答を表示したりしてくれる。呼び出せる機能は様々だ。電話をかけたい人の電話番号を尋ねて電話をかけたり、カレンダーを呼び出して今日の予定を入力したりできる。そのほかにも「今日の天気は?」と話しかけて天気予報を表示する、「日経平均株価はいくら?」と話しかけて今日の株価を調べるといった使い方も可能だ。
NTTドコモも同様のサービス「しゃべってコンシェル」を、基本ソフト「アンドロイド」を搭載した端末向けに3月から提供している。執事役(コンシェルジュ役)となるキャラクターの羊に話しかけてメールや電話などの各種機能を起動できる。スマホに質問すると、ドコモのポータルサイト「dメニュー」のコンテンツから情報を検索し、ふさわしい回答を表示してくれる。クックパッドのレシピ情報、ゼンリンデータコムの地図、ウィキペディア、Q&Aサイトの「教えて!goo」など豊富なコンテンツから知りたい情報を検索できるのも強みだ。
瞬時に外国語に翻訳
声を使って操作するアプリも相次ぎ登場している。アドバンスト・メディアがアンドロイド端末とiPhone向けに提供する「音声認識メールクラウド」は声による文章入力に特化したアプリ。スマホに話しかけると即座に文字になって画面に表示される。抑揚の違いや話すスピードにも瞬時に対応し、高い精度で声を文字にできる。メールのほかブログやツイッター、フェイスブックなどに投稿する文章もこれ一つで入力できる。
スマホに話しかけた言葉を瞬時に外国語に翻訳してくれるアプリもある。「グーグル・トランスレート」はマイクのボタンを押して話しかけると、その場で外国語に翻訳してくれる。日本語や英語、中国語などのほか、アルバニア語やエストニア語など64種類の言語に対応。外国語でとっさの一言が出てこない時に重宝しそうだ。
音声入力とは逆に、日本語の文章を声で読み上げてくれるアプリもある。Crestra(横浜市)がiPhoneとiPad(アイパッド)向けに提供する「金沢文庫」は、著作権が消滅した文学作品などをインターネット上で公開している電子図書館「青空文庫」の書籍をダウンロードして音声で読み上げてくれる。スマホの画面で、長時間の読書をすると目が疲れてしまうという人におすすめ。女性と男性の声を選べるほか、音の高さやアクセント、読み上げるスピードも調節が可能だ。
障害者向けの実験も
これらのアプリが使う音声の認識や読み上げの技術を利用し、高齢者や視聴覚障害者向けに様々な情報を提供するサービスの実験も始まっている。音声入力アプリを提供するアドバンスト・メディアは、タブレット端末を利用した聴覚障害者用の機器を開発中。話された日常会話を画面上の文章として表示したり、手書き文字を入力して筆談したりできる。
フィンランドやスペインなど海外では、医薬品の包装に取り付けたラベルに携帯電話機をかざすと、薬の情報を読み取って音声で再生してくれる技術などの開発も進んでいる。こうした技術の実用化が進んでくれば、スマホやタブレット端末の活用の幅はさらに広がっていきそうだ。
(経済部 浜美佐)
[日本経済新聞夕刊2012年4月19日付]
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