静岡・清水町 富士の湧き水、街澄ます住民が開発から守る

2012/4/14

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静岡県東部の清水町は富士山からの豊富な地下水が湧き出る柿田川湧水群で知られる。その水質や水資源保護への関心が高まる中、昨年9月には国の天然記念物にも指定された。街中に突然現れる名水の地は、自然の不思議さと魅力で満ちている。

清水町の柿田川では透明感のある地下水が至る所で湧き出ている

交通量の多い国道1号脇にある柿田川公園。国道に沿うように坂道を下りると、藻に覆われた水面が眼下に広がった。柵に囲まれているため水辺までは近づけないが、澄んだ水面越しにあちこちで砂を噴き出しながら水が湧いているのが見える。

水量は1日約110万トン。東京ドーム1個分弱に相当する。「湧き出し口は大きいものだけで数十カ所あります」。清水町観光ボランティアガイドの石井功さん(72)があちこちを指さして教えてくれた。

地下水は10~20年かけて地表へ

富士山に降った雨や雪が地下を通って出る湧水は、静岡県や山梨県の各地に点在する。1日の全ての水量は推定で計450万トン程度。柿田川はその4分の1を占める計算になる。約1万年前の富士山噴火で三島周辺まで35キロを流れ出た溶岩流の層が地下数十メートルにわたって埋まっており、これが他の地層からの地下水をため込む水道管のような役割を果たしているわけだ。

地下水は溶岩の間を極めてゆっくりと進み、10~20年かけて山裾の地表に現れる。水温は1年中15度前後。柿田川の水が澄み、名水として評価されているのも、溶岩による天然のろ過効果とミネラル分のたまものだ。

湧き水が柿田川となって流れるのは狩野川に合流するまでの1.2キロ。湧水群一帯は公園として整備され、年間20万~30万人の観光客が訪れる。名古屋から来た20代のカップルは「街中なのに水がきれいで気持ちいい」と満面の笑みで話してくれた。

公園の駐車場に接して、昔の製紙会社の邸宅や蔵を使った土産物店や喫茶店などが立ち並ぶ「泉の館」には、湧き水を飲める取水所もあり、家族連れなどでにぎわう。

観光客からみてやや残念なのは遊歩道が川辺から距離があることだ。川辺の自然保護の観点からだという。街から近く常に開発の波にさらされてきた柿田川は、地元住民の努力などによりかろうじてその豊かな自然を維持してきた歴史がある。

柿田川みどりのトラスト会長の漆畑信昭さん(76)らが保護活動を始めたのは1975年。工場建設による揚水・排水、観光施設や宅地造成から守るため、流域の土地買い上げなどを進めた。「おいしい水は後世に残すべき資産。観光地ではなく『環境地』として見守ってほしい」と漆畑さんは訴える。子どもたち向けに人数限定で川に入って魚や藻を観察するイベントを行うなど、自然保護の大切さを後世に伝えようと工夫を凝らす。

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