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貧乏ゆすり、実は健康にプラス エコノミークラス症候群予防にも

2012/4/10 日本経済新聞 朝刊

■エコノミークラス症候群の予防も

なぜ、ふくらはぎの皮膚の温度が上昇するのか。血管外科が専門の博愛会病院(岐阜県垂井町)の松原純一院長は「血流が改善するからだ」と説明する。貧乏ゆすりはふくらはぎの筋肉が伸び縮みする反応。ふくらはぎは足腰に滞りやすい血液をポンプのように心臓へ送り返す働きがある。この筋肉が動くと、全身の血行がよくなるという。

具体的には、深部静脈と呼ぶ血管がふくらはぎの筋肉の伸縮によって、圧迫されたり開放されたりする。静脈には逆流を防ぐ弁がついており、井戸のポンプと同じ仕組みで心臓に血液を送り込みやすくなる。

女性に多いむくみの解消にもつながるという。むくみは皮膚の下に血管から漏れ出た余分な水分がたまる状態だ。女性は筋肉量が少なく皮下脂肪が多いため、起こりやすい。血流が改善すると、余分な水分が血管に取り込まれて解消する。松原院長は「ふくらはぎを締め付けるストッキングをはけば、効果が高まる」と助言する。

松原院長は「エコノミークラス症候群の予防にも役立つ」と指摘する。同症候群は飛行機の座席で長時間過ごしたため、静脈にできた血の塊(血栓)が肺の血管などに詰まって起こる。「貧乏ゆすりで血流が良くなれば、血栓ができにくくなる」と松原院長は言う。

■「貧乏ゆすり」ではなく「健康ゆすり」

中高年以上に多く、加齢や運動不足、肥満などが原因で起こる変形性股関節症。股関節に隙間ができた結果、軟骨がすり減って炎症を起こし激痛が生じる。柳川リハビリテーション病院(福岡県柳川市)はこの病気の治療に貧乏ゆすりを積極的に取り入れている。井上明生名誉院長は「副作用はない。お金もかからないので患者に勧めている」と話す。

とにかく暇を見つけて実行するよう患者に指導している。クセになるほど動かすことが大切だ。手術を望まない60代の女性患者に勧めたところ、5年後には痛みが和らぎ、関節の動きもよくなったという。

詳しいメカニズムはわかっていないが、軟骨を培養するときに外から刺激を与えると成長しやすいという報告がある。京都大学の秋山治彦准教授は「貧乏ゆすりでも、軟骨を再生する効果が期待できる」と言う。

貧乏ゆすりをしすぎることで関節痛を引き起こしたりしないのか。こうした心配について、どの専門家も否定する。国立長寿センターの中村室長は「貧乏ゆすりという言葉がよくない。健康ゆすりと呼びたい」と力説する。諸説あるが、膝を揺すっている姿が貧しくて空腹や寒さにふるえている様子に似ていると嫌われた貧乏ゆすり。後ろ向きのイメージを返上できる日が来るかもしれない。

(新井重徳)

《ホームページ》
◆変形性股関節症の治療をしているのは
「柳川リハビリテーション病院」(http://www.kouhoukai.org/yanagawa/)
◆深部静脈について分かりやすく解説しているのは
「血管外科(さいたま市立病院)」(http://www.asamikekkan.jp/sinnbujyoumyakukessennshou.html

[日本経済新聞朝刊2012年4月8日付]

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