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エコノ探偵団

動物が製品作りに参加? 形状まねて「新産業革命」 エコノ探偵団

2012/4/8 日本経済新聞 プラスワン

「家電メーカーが掃除機を開発する際にネコが加わったそうよ。どういうことかしら」。近所の主婦が事務所に興味深い話を持ち込んだ。探偵、深津明日香が上着をはおった。「人間以外の動物が製品作りに参加ですって? すぐに調べます」

明日香は掃除機を作ったシャープで尋ねた。「人手不足で『ネコの手も借りたい』のですか」。苦笑しながら主任研究員の大塚雅生さん(41)が説明してくれた。「ネコが設計したわけではありません。舌をみせてもらい、その仕組みを掃除機に応用したのです」

■性能がアップ

本来は肉食動物であるネコの舌の表面はザラザラしている。これと同様に小さな突起をたくさん、掃除機の中のゴミを圧縮するブレードという部品につけてみた。すると圧縮率が4分の1から10分の1に向上、従来よりも多くのゴミを吸い取れるようになった。

同社は2008年からアホウドリやイヌワシの翼の形をまねた部品で送風効率を高めたエアコン、トンボの羽を参考にした加湿空気清浄機、イルカの尾びれの形を洗濯槽で再現した洗濯機などを相次ぎ発売した。大塚さんが教えてくれた。「こうした技術を生物模倣と呼びます。この10年間で研究者が随分増えました」

明日香は紹介された日東電工をおっかなびっくり訪ねた。「ヤモリがいるそうですが……」。主任研究員の前野洋平さん(37)がかぶりを振った。「ヤモリはいませんよ。接着剤を使わない粘着シートの実用化を2月に発表しましたが、その研究に使っただけです」

ヤモリの足裏は天井に張り付いたまま楽々と移動できる驚異的な粘着力を持つが、強い粘液などは出ていない。注目すべきは足裏にびっしりと生えた直径0.2マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル程度の毛だ。この無数の毛と、張り付く相手との間に「分子間引力」という力が働き、体を支える。

大型機の翼も

同社は阪大の研究者とともに、さらに細い、直径がナノ(ナノは10億分の1)メートル単位の毛を持つ両面粘着シートを開発した。接着剤を使わないのではる対象を汚さず、従来よりも幅広い温度帯である500度から氷点下150度まで耐える。前野さんは「微細な分析技術の発達で生物の特性が詳しくわかり、模倣が広がったのです」と話した。

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